資産税の落とし穴 vol.13

税務調査の素朴な疑問(2)
~電話問い合わせ、資料の提示、事前通知~

 

 平成30年1月20日発行

 

(2)税務調査の素朴な疑問~電話の問い合わせ~

 実地調査の件数が減った結果、電話等による照会が相対的に増加してきました。税務署からの電話での問合せにどう対応すべきでしょう。国税庁のホームページでは「簡易な接触」と区分されて、「文書、電話による連絡または来書依頼による面接」はかなりの数が行われています。さて、ここで問題になるのが加算税です。税務署からの電話連絡も冒頭きちんと確認しておかないと、修正申告した際の加算税が変わってきます。電話連絡で「これ間違っていませんか?」という行為も、税務調査だと加算税が課される、一方、行政指導だと加算税は課されないと明確に区分されます。実際に誤りがあった場合、加算税10%があるのと無いのとではかなり違ってきます。税務署からの電話連絡は「税務署の担当者は、納税者の方に調査又は行政指導を行う際には、具体的な手続に入る前に、いずれに当たるのかを納税者の方に明示することとしています。」と規定にはありますが、現実的には明示されないことがほとんどかと思います。だからこそ、税務署からの電話連絡においては、最初に税務調査なのか行政指導なのかを確認しておかないと、あとあと修正申告を提出する段階でもめる原因となりかねません。上記を区分する基準は、税務署職員が「これは調査です」と言ったかどうかのみです。最初に確認しましょう。

(3)税務調査の素朴な疑問~調査でどこまで見せるか?~

 税務調査において「何を見せなければならないか」、逆にいえば「何を見せなくてもいいのか」、判断に迷うケースがあります。当然に「私物」などは見せる必要性はありません。例えば、法人税の調査において、その法人の代表者名義の個人預金について「事業関連性が疑われる場合には」見せなければならないと国税庁ホームページに記載があります。しかし、事業関連性がある物は「すべて」見せなければならないのかというと、この点も非常に微妙です。結局のところ、調査官は「ある物をすべて見て、差異がある箇所を否認指摘する」わけです。こうなると、言われたものを全部見せれば「実際には売上計上漏れなどなくても」資料上は差異が出てしまう場合もあります。この差異を明確に説明できる場合はいいのですが、明確な説明ができないケースもあるということです。こういう観点から考えると、調査官からの提示要請に対して無条件に応えていると、痛い目をみる可能性があるというわけです。

(4)税務調査の素朴な疑問~事前通知って何?~

 ここ数年の税務調査の傾向として、6月下旬~7月初旬の調査予約が急激に増えています。この傾向は、3年ほど前に始まり、毎年増えているものと実感しています。

 

【改正前】
7月10日の異動
⇒調査官による調査先の選定開始
⇒7月下旬から事前通知を順次開始

 

であったものが、

 

【改正後】
6月中旬から調査先の選定開始(一部)(調査選定していたが未着手になったものを含む)
⇒ 6月下旬~7月初旬に事前通知(7月もしくは8月上旬の調査予約)
⇒ 7月10日の異動⇒ お盆明け前後から調査スタート

 

という傾向・流れです。
これは、国税通則法の改正で調査件数が極端に減ったことを踏まえて、調査件数を増やす施策として実施しているものです。
 以前であれば、税務署内の動きとして、上述のとおり6月中旬には調査事案を結了⇒ 7月10日の異動まで暇であったものが、異動前の空いた時間を有効活用する、というもっともな内部事情と言えます。さて、この時期の早い段階で事前通知があった場合、特殊事情があるか(何か掴まれているのではないか)、というと、そんなことは全くないです。上記の電話照会と同様、あくまで調査件数を増やす施策の1つであって、この時期に事前通知があるから、というのは、税務署の中では何も考慮していません。この時期に事前通知があったからといって、それほど心配する必要はないかと思います。

 

 

<執筆者>

伊藤 俊一 氏

 

税理士/伊藤俊一税理士事務所 代表税理士
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。
税理士試験5科目合格。一橋大学大学院修士。

 

都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定 試験委員。現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。

 


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