資産税の落とし穴 vol.4

 

 

『保険を活用した典型的な生前贈与(後半)』

 

 平成29年4月20日発行

 

※平成28年3月20日配信『保険を活用した典型的な生前贈与(前半)』の
「被相続人の事情別 ~保険契約の類型~」内容の続きとなっております。
前回配信分をご覧になりたい方は、こちらをご覧ください。⇒ 平成28年3月20日配信分



 (前半の続き)

(ロ)次に財産評価と保険金額との評価額ギャップを利用する「資金運用プラン」です。

財産の中にかなりの現金が含まれている場合にはこの方法が有効です。保険は「終身保険」や「変額終身保険」「逓増型終身保険」「養老保険」がよいと思われます。加入形態は、契約者=被相続人、被保険者=相続人など、受取人=被相続人にします。この場合、相続人が将来の保険金や満期金などの受取に関する権利を相続することになります。相続が発生した時は、被保険者が相続人なので保険金は支払われません。しかし、相続税評価額上は、解約返戻金や契約者貸付金等を受け取ることは可能です。相続発生後は相続人が保険契約者として地位を承継することになります。

この場合の保険金を受け取る権利の評価の相続税評価額は解約返戻金相当額になります。なお配当があれば、これに加えることになります。なお、運用効果を高めるためには、できるだけ保険料の支払期間は短いほど有利です。

(ハ)次に遺産分割トラブルを回避する代償分割プランです。

相続財産に占める割合で不動産が多い場合など、分割しにくい形になっている場合に、代償分割に生命保険金を充てるプランです。加入形態は契約者=被相続人、被保険者=被相続人、受取人=相続人または、契約者=相続人、被保険者=被相続人、受取人=相続人となります。つまり、財産を現金で相続すべき相続人に対して保険金が支払われるようにすればよいわけです。受け取った保険金にどのように課税されるかはこの場合、特段問題になりません。ただし、留意したいのが「契約者=相続人、被保険者=被相続人、受取人=相続人」という形態です。ここでは契約者と受取人が同一であることが必要です。契約者と受取人が別人になると契約者から受取人に対する贈与税の問題が生じてしまいますので、注意が必要です。

(ニ)相続対策完了までのリスクヘッジになる一時保障プランです。

相続対策を徹底的に実行して、相続税が大幅に減少した場合、また、分割も円滑に言った場合に実行します。対策が完了するまでは納税や分割が逆に困難になってしまう恐れもあります。その長期にわたる計画が完了するまでのリスクヘッジです。

保険の種類、加入形態は一概に言えません。また保険の特徴は極めて煩雑で、まさにケースバイケースの最たるものといえます。保険担当者のいうことをうのみにせず、複数の保険専門家、税理士などに意見をきいてみてご自身の置かれている状況、資産構成、価値観にベストマッチした保険を選択していただきたいと思います。その際に、考え方の基本として保険とは、「長期にわたる相続対策の一環としてその他対策と同時に実行する」というイメージをもたれるのがよろしいかと思います。

(ホ)保険による対策法をご紹介したついでにキャッシュリッチな方の金融資産対策全般をまとめておきましょう。

・保険の非課税枠の確保

法定相続人の数×500万円

1次相続だけでもこれだけの非課税枠が利用できます。2次相続でも同様の効果が期待できます。

・保険を活用した金融資産の評価減

 上記、財産評価と保険金額との評価額ギャップを利用する「資金運用プラン」をご参照ください。

(ヘ)継続的贈与の実行

 毎年、一定額の資金を相続人に贈与し、それを保険により運用してもらうプランです。

 財産診断では現状加入している保険もすべて洗い出します。保険会社のソルベンジーマージン比率までも考慮して保険の有効性を検証します。さらに、その保険が資産経営にあたってどの程度の有効性を確保しているかも具体的な数値を用いて計算します。

 

<執筆者>

伊藤 俊一 氏

 

税理士/伊藤俊一税理士事務所 代表税理士
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。

 

勤務時代、都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業再生、事業承継、資本政策、相続税等のあらゆる税分野のコンサルティングを経験。特に、事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験しており、豊富な経験と実績を有する。

現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定 試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科修士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。

 

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