日税FPメルマガ通信 第394号

Ⅰ. 日本銀行の金融政策の現状

1.9月21日から22日の金融政策決定会合

日銀が金融緩和政策の現状維持を決定しました。日銀は9月21から22日の金融政策決定会合において、長短金利を操作するイールドカーブコントロール(YCC)を軸とした現行の大規模金融緩和策の現状維持を全員一致で決定しました。
また、「必要なら躊躇なく追加緩和をする」との表現を含め変更はありませんでした。経済動向については、景気は緩やかに回復しているとの判断を維持し、先行きも緩やかな回復を続けるとしました。

2.植田総裁は政策修正の時期は、決め打ちできないと発言

植田総裁は政策修正時期について言及せず、植田総裁の記者会見では、物価目標の持続的・安定的な実現を見通せる状況にはないとし、粘り強く緩和継続で2%の物価安定目標の実現を目指すとしました。植田総裁は 9月9日の某新聞社へのインタビューにおいて、「賃金と物価の好循環を見極めるためのデータが年内にもそろう可能性もある」と回答しましたが、9月22日の会見では、現時点では経済・物価の不確実性は高いとし、政策修正の時期は決め打ちできないと発言しました。

3.判断基準はインフレ率上昇と賃金上昇の好循環

2023年8月の全国消費者物価の生鮮食品を除く総合は、前年比+3.1%と7月の同+3.1%から横ばいの結果となり、依然インフレ圧力の強さが示されました。

内訳を見ると、電気代が同▲20.9%と大きく下落した一方、生鮮食品を除く食料は同+9.2%と 価格転嫁が進む中で高い伸び率を維持しました。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合についても、同+4.3%(7月 同+4.3%)と前月から横ばいとなりました。今後の焦点 は、2024年の春闘を占う賃金の上昇率が年末に向けて加速するのか、インフレ率が更に上昇するかの見極めにあると見ています。

インフレ率上昇と賃金上昇の好循環が進んだ場合、来年初にYCC撤廃やマイナス金利解除を含めた金融政策正常化実施の可能性が高まると見ています

4.市場はさらに円安が進行
  (日本は金利を上げず。5.25~5.50%の政策金利である米国と真逆の金融政策を継続)

金融市場では会合結果を受け、円安が進行日銀の金融緩和策継続を受け、為替市場では148円台まで円安が進行しました。

ただし、今後の金融政策正常化への期待が高まる局面では、円高に転じる可能性があります。

金融政策会合後は一時的に低下するも依然高水準を維持しており、株価については、先週は米金利の上昇から下落基調でしたが、日銀の緩和策継続を受けて下げ幅を縮小しました。今後も株価は金利動向が鍵になると考えられます。

Ⅱ. 東京23区のマンション価格が高い

1. 東京23区では、平均価格も「億ション」値上がり期待が需要押し上げた

2023年になり、最近「マンション価格が高い」と感じる人は多いです。東京の都心へ絞ると、さらなる高騰の内実が浮かびます。2023年1~6月の東京都23区新築マンション平均価格は過去最高の1億2962万円であります。平均で1億円の大台を超えました。

国土交通省からは、2023年春に平均2億~4億円程度の超高額物件が供給されて平均を押し上げたと説明しております。その中でも港区の「三田ガーデンヒルズ」「ワールドタワーレジデンス」などの影響は顕著でした。


2023年ほど高額物件が集中するのは珍しく、2024年上半期はいったん下落しそうですが、2022年以前の水準まで下がる見込みは薄く、全体的に上昇基調が続く見通しでありますという大手不動産会社のコメントが気になります。

建築の資材・人件費の上昇に加え、最近は用地取得コストも膨らむ傾向が強く、供給側からみると東京23区の高値は揺るぎそうにないです。
ただ、これほどの高値で需要は息切れしないのか心配です。投資的な値上がり期待が加わったことが大きいと考えられます。


2. 新築だけでなく中古マンションの価格も高くなっている

新築マンションの高騰は、中古マンション価格にも波及しています。2022年の首都圏マンションについて、駅単位で周辺相場を調べると対象の398駅中、9割を超す駅で新築分譲時より中古価格が高かったです。

2023年に入ってからは都心6区(千代田、中央、港、新宿、文京、渋谷)に絞れば、中古マンションも平均1億円超で推移する月が多いです。
購入負担は重くても、値上がり期待が需要を下支えしております。


また、日本国内では金利の影響も大きいです。足元で一部の固定型住宅ローン金利は上がりましたが、変動金利型はなお年0.3%程度も多いです。


3. 海外投資家の動き

価格上昇や低金利に期待をかける、海外投資家も高額マンションへの関心は高いです。

為替動向は不透明要素ですが、米国など海外主要都市は異常なほどの高さであり、海外に比べて東京都心の不動産は、まだ値ごろで魅力的です。少々の円高では購入意欲は衰えないと思われます

なお、全国で供給される億ション総戸数のうち足元の2022年は実に7割超を23区が占めています。少しずつ増加しているとはいえ、23区を除く全国の億ションの戸数は合計しても、23区の3分の1程度にすぎません。

現在のマンション市場は、買い手も売り手も、純粋な『住まい』としての利用価値以上に『資産性』を重視する傾向が強まっています。このままでは手堅い価格推移が見込める都心集中が今後、一段と加速しかねません。

Ⅲ. 米国の金融政策の現状

1. 米国、遠のく利下げ転換 FRB、来年末見通し上げ、インフレ懸念拭えず

米連邦準備理事会(FRB)による利下げ転換時期が遠のいています。米経済が想定以上に強くインフレ懸念がなお拭えないためであります。

9月20日に公表した経済見通しは、利上げ終了後も高金利が続く慎重な内容になりました。引き締めの長期化が景気を冷やすリスクにも配慮した両にらみの金融政策運営を迫られています。
2023年9月20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、金融引き締めに積極的な「タカ派」色の強い内容と受け止められました。22年ぶりの高水準となった5.25~5.50%の政策金利を2会合ぶりに据え置いたのは事前予想通りであります。

2. 2024年末の政策金利の見通し

市場を驚かせたのは同時に公表した2024年末の政策金利の見通しであります。

中央値は5.1%で、2023年末の5.6%からわずか2回分の利下げ幅にとどまりました。前回見通しの4回分から一気に縮小しました。

政策金利がピークを付けた後、2024年に利下げに転じるシナリオは従来通りですが、その時期がこれまでより後にずれることを示唆しました。

利上げの到達点は、予想がほぼ2択に絞られました。

経済見通しではFOMCメンバー19人中7人がすでに利上げが終わったと予想しております。残り12人は23年内にあと1回の追加利上げを想定しております。


3. 米国の金利上昇の背景は個人消費の強さがあるとして、コロナでの政府の現金給付

パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、政策金利予想の修正について「経済活動が予想よりも堅調だったことを反映している」と説明しました。

なぜ利上げを1年半続けても米景気は強いのか、パウエル議長は、背景に個人消費の強さがあるとして、コロナでの政府の現金給付( 給付総額は成人で一人当り3200㌦・約35万2000円で、米国ではコロナ前では消費が多かったですが、今回老後の貯蓄に回したり、ローン返済に充てた人が大半)などで家計や企業のバランスシートが想定外に強固だった可能性に言及しました。

FRBは 2022年3月のゼロ金利解除以降、1980年代以降で最速となるペースで利上げを続けてきました。 40年ぶりの高インフレを前に金融を引き締めることを優先しました。

Ⅳ. チャート(日米の株価)2023年9月29日時点 
  出所:ブルームバーグ社


1. 米国・NYダウ(ダウ・ジョーンズ工業)
  (5年間)
  年初来の騰落率0.7%上昇



2. アメリカドル(5年間)



3. 日経平均株価(5年間) 
  年初来の騰落率
  22.1%上昇


以上




<著者プロフィール>
乾 晴彦 氏
CFP、1級FP技能士、DCアドバイザー、宅建取引士(旧:宅建主任者)、証券外務員一種資格、終活カウンセラー、PB(プライベートバンキング)資格 昭和31年生まれ。
長年にわたり金融機関でコンサルティング業務を担当後、大手証券会社の人材開発室で、FP・生命保険の社内講師を務める。
現在は、銀行・証券・保険会社をはじめとする上場企業での社員向け営業研修講師、また、大学や大手資格予備校、FP教育機関でのFP研修講師として活動している。シニア層や富裕層向けの研修・相談業務には定評があり全国にファンも多い。

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