日税FPメルマガ通信 第393号

「外貨建て一時払い保険」解約時、受取時の税制について
2023年9月20日発行

 

高い運用利回りが魅力の「外貨建て一時払い保険」ですが、税制がどのようになっているかまで確認して加入している人は少ないのではないでしょうか。「思ったより税金が取られた」ということにならないためにも正確な知識を持っておくことが重要です。

そこで、今回は、各金融機関で主力の販売商品となっている「外貨建て一時払い終身保険」の受取時の税制について解説します。

1.税制のしくみ

個人が加入する保険に関係する税金は、主に、①相続税、②所得税(住民税)、③贈与税です。「円建て」も「外貨建て」も基本的には変わりません。どの税金が発生するかは、保険契約の内容によって変わります。

保険契約を締結する場合、保険会社と保険契約を締結する「契約者」、保険の対象となる「被保険者」、保険金を受け取る「保険金受取人」が定められます。この三者がどのように設定されるかによって税金の種類が変わってきます。

終身保険は、被保険者が死亡した場合に保険金が支払われるので、保険金を一時金で受け取る場合、次の3パターンが考えられます。

①契約者「本人」 被保険者「本人」 受取人「配偶者」 → 相続税
保険契約者が「本人」で、被保険者も「本人」、保険金受取人が「配偶者」というパターンです。このパターンが最も多いと思われます。この場合、本人が保険料を支払っていて、本人が亡くなったことにより相続人である配偶者に死亡保険金が支払われます。財産が被相続人から相続人に移るので「相続税」ということになります。

②契約者「本人」 被保険者「配偶者」 受取人「本人」 → 所得税(住民税)
保険契約者が「本人」で、被保険者が「配偶者」、保険金受取人が「本人」というパターンです。被相続人である配偶者が亡くなって、本人が保険金を受け取るので、相続税と思われる方もいると思いますが、この保険は、本人が契約者で、本人が保険料の負担をしています。したがって、配偶者からの財産移転ではなく、あくまで本人の所得の増加になるので、「所得税(住民税)」ということになります。

③契約者「本人」 被保険者「配偶者」 受取人「子」 → 贈与税
保険契約者が「本人」で、被保険者が「配偶者」、保険金受取人が「子」というパターンです。被相続人である配偶者が亡くなって、子が保険金を受け取るので、相続のようにも思われますが、保険契約者は本人で、保険料を支払っているのは本人なので、本人から子への贈与となり、「贈与税」ということになります。

2.「外貨建て」の計算での注意事項

「円建て」でも「外貨建て」でも基本的に税金の計算は同じですが、計算をする際は少し注意が必要です。外貨建ての保険の場合、税金の計算をする場合、円建てに換算してから計算する必要があるからです。

外貨から円に換算するレートは、基本的にTTM(Telegraphic Transfer Middle Rate)を使用することになります。保険料については、「支払った日」、保険金については「支払事由該当日」が基準日になります。ただ、死亡保険金が相続税や贈与税の対象になる場合の換算レートは、TTB(Telegraphic Transfer Buying Rate)になります。この場合の基準日は、「効力発生日」になります。

TTMは、「電信仲値相場」と呼ばれ、基準レートになります。TTBは、「電信買相場」で、外貨を買うときに適用されるレートです。国税庁より、相続税や贈与税を計算する場合、「対顧客直物電信買相場(TTB)またはこれに準ずる相場」とされていることから、相続税や贈与税の時は、TTBレートが使われます。

3.まとめ

外貨建て一時払い保険は、日本に比べ運用利回りの高い外貨で運用できるため、少ない保険料で大きな保障を得ることができます。ただ、円ベースで保障を考えると、為替リスクがあり、両替するのにも手数料が発生します。税の計算も円に換算して行わなければならず、円貨建ての保険に比べると複雑になります。これら、注意点を十分に踏まえ、円貨建ての保険に加入するか、外貨建ての保険に加入するかを検討するようにしてください。



<著者プロフィール>

福田 猛

ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役

大手証券会社を経て、2012年に金融機関から独立した立場で資産運用のアドバイスを行うIFA法人ファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。資産形成・資産運用アドバイザーとして現役活躍中。2015年楽天証券IFAサミットにて独立系アドバイザーとして総合1位を受賞。東京・横浜を中心に全国各地でセミナー講師としても活躍し、大好評の「投資信託選びの新常識セミナー」は開催数240回を超え、延べ8,000人以上が参加。新聞・経済誌等メディアでも注目を集める。著書に『投資信託 失敗の教訓』(プレジデント社)等がある。


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参考

経済金融情報メディア「F-Style」:https://fstandard.co.jp/column/

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