日税FPメルマガ通信 第387号

高値掴みを回避する「ビルドアップ型投信」
2023年6月20日発行

 

ビルドアップ型投信という投資信託をご存知ですか?
極めて珍しい投資信託なので、聞いたことがないと言う方も多いでしょう。

ビルドアップ型投信とは、ドルコスト平均法でリスクを抑えながら、株式への組み入れを増やしていくタイプの投資信託です。
いろいろな投資信託を知識として知っておきたいという方は参考にしてください。

そこで今回は高値掴みを回避する「ビルドアップ型投信」について解説します。

1.ビルドアップ型投信とは?

ビルドアップ型投信は、ドルコスト平均法を活用して投資リスクを抑えながら株式部分の組み入れ比率を増やし、最終的に株式比率100%の運用に変わるという仕組みの投資信託です。
ビルドアップ型投信の特徴、および、メリット・デメリットについて解説します。

ビルドアップ型投信の特徴
ビルドアップ型投信の最大の特徴は、少しずつリスク資産を増やしていくという運用方針にあります。

例えば以下のビルドアップ型投信の場合、1万円投資をしたとすると設定当初は、投資額の大半が日本国債や短期金融資産で運用。
以降、毎月約500円ずつ株式投資部分を増やし、1年9ヶ月後からは株式投資のみの運用になるという仕組みです。
なお、この株式部分に積み上げていく期間のことを「時間分散投資期間(株式部分積み上げ期間)」と言います。

2.ビルドアップ型投信のメリット

ビルドアップ型投信のメリットは、株式中心の投資信託でありながら、投資先に独自の基準で選定したプレミアム企業を選定していること、そしてドルコスト平均法を用いてリスクを抑えた運用方法を行っている点です。

ドルコスト平均法とは、株式や投資信託のように値動きをする商品を、毎月1万円、毎月2万円というように定額で買い付け、平均買付単価を抑える基本的な投資リスク抑制方法のこと。購入時期を分散させることから、「時間の分散」「時間的分散」とも言われます。

ビルドアップ型投信では、設定当初の日本国債や短期金融資産中心の運用から、株式投資の比率を高めることで、ドルコスト平均法のメリットを働かせていると考えられます。

3.ビルドアップ型投信のデメリット

ビルドアップ型投信は、時間分散投資期間ドルコスト平均法を活用して、リスクを抑えながら株式部分を増やしていく仕組みですが、現存しているビルドアップ型投信の時間分散投資期間は1年9ヶ月しかありません。

選定銘柄や運用方針によって一概には言えませんが、1年9ヶ月で時間的分散の効果が十分働くか疑問が残ります。分配金を支払う前提になっていますが、日本国債や短期金融資産の比率が多い時間分散投資期間は、投資信託の収益が少ないため分配金はまず期待できないでしょう。

また時間分散投資期間から、株式投資のみで運用する期間に移行すると、信託報酬が上がる点にも注意が必要です。

4.まとめ

ビルドアップ型投信は、ドルコスト平均法を活用して少しずつ株式投資比率を増やしていく投資信託です。最終的に株式投資のみの運用になりますが、ドルコスト平均方を活用して買い付ける時間分散投資期間があること。独自基準で選んだプレミアム企業で運用することから、一般的な株式100%で運用している投資信託よりリスクを抑えた投資信託と言えます。

また運用開始当初は分配金がほとんど期待できない、時間分散投資期間終了後に信託報酬が上がる点には注意が必要です。


<著者プロフィール>

福田 猛

ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役

大手証券会社を経て、2012年に金融機関から独立した立場で資産運用のアドバイスを行うIFA法人ファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。資産形成・資産運用アドバイザーとして現役活躍中。2015年楽天証券IFAサミットにて独立系アドバイザーとして総合1位を受賞。東京・横浜を中心に全国各地でセミナー講師としても活躍し、大好評の「投資信託選びの新常識セミナー」は開催数240回を超え、延べ8,000人以上が参加。新聞・経済誌等メディアでも注目を集める。著書に『投資信託 失敗の教訓』(プレジデント社)等がある。


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参考

経済金融情報メディア「F-Style」:https://fstandard.co.jp/column/

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