日税FPメルマガ通信 第382号

 

I. 日本銀行の黒田総裁の10年間の振り返り

  1. 日銀の黒田東彦総裁は、2013年の就任以来、10年間にわたり金融緩和を継続されました。その間、日本経済の重荷だった円高や株安は修正されましたが、超低金利に慣れきった政府や企業の改革は遅れました。その結果、異次元緩和の副作用が強まり、日銀依存は転機を迎えています。

  2. 就任前に1ドル=70円台をつけていたドル円相場は、1年間で105円まで円安が進みました。1万円台を割り込んでいた日経平均株価は、年末には1万6,000円台まで上昇し、輸出産業(日本の主力産業であり自動車や電機業界など)を中心とした大企業製造業の経営環境は大幅に改善しました。


  1. 前任の白川方明総裁時代は、日銀は金融緩和に消極的とみられ未曽有の円高が進んでいました。黒田総裁になられて、2年で資金供給量(マネタリーベース)を2倍にして物価2%を実現すると言い切ったことにより、金融市場の空気はリスクオフからリスクオンに一変しました。

  2. 金利を低く抑えつける政策は、円安が行き過ぎるリスクと紙一重です。最近では、米欧の利上げ加速で2022年10月に円相場は32年ぶりに1ドル=150円台まで下落しました。コロナによりインフレになり資源高と相まって、政府・日銀は24年ぶりの円買い介入を迫られました。

  1. 黒田体制の10年で、日銀が金融機関に供給する資金供給量は134兆円から646兆円と4倍強に増えました。国内銀行の融資残高も就任前の約400兆円から約520兆円へと3割弱増加しました。貸出金利(約定金利、残高ベース)は1.32%から0.77%に下がった。

    円安・株高もあり、アベノミクス景気と呼ばれる戦後2番目の長さの好景気が実現したのは確かです。しかし、受益者の大半は主に大企業などにとどまり、賃上げなき成長で個人消費は伸び悩みました。そのため、成長率は平均で1%程度と低く、大企業から中小企業、家計に恩恵が広がっていくことは限定的でした。





Ⅱ. 米国の2つの銀行が破綻

  1. シリコンバレーバンク(SVB)が3月10日に経営破綻
    経営破綻が金融システム全体に波及するとの懸念から金融株を中心に売られ、株式市場は大きく下落しました。今回の破綻は、FRBの利上げ幅や今後の政策運営を決定する上での検討材料の一つになる可能性もあります。

    米国カリフォルニア州を拠点とし、主に、スタート アップ企業への融資で知られる米中堅金融会社SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレーバンク(SVB)は、3月10日に経営破綻しました。規模は全米16位で同行の2022年12月末時点の総資産は約2,090億ドル(約28兆円)であり、今回の破綻はリーマン・ショック時の2008年9月に破綻したワシントン・ミューチュアルに次ぐ資産規模となります。

    新型コロナの救済策として、米連邦準備制度理事会(FRB)による現金給付などで、SVBに多額の預金が集まりました。SVBは他行と比較して預金の多くを融資よりも債券投資などで運用していたため、2022年よりFRBが金融引き締め姿勢へ転換し金利が上昇すると、同行のバランスシートは急激に悪化(債券価格は下落)し、経営破綻に陥りました。米国株式市場は、経営破綻が金融システム全体に波及するとの懸念から金融株を中心に売られました。

  2. 3月12日には、シグネチャー・バンクも破綻
    中小企業向けの専門銀行、また、多数の暗号資産企業を顧客として抱えるとして知られるシグネチャー・バンク(ニューヨークを本拠地)も経営破綻し、市場で連鎖破綻が懸念されるなか、米財務省は3月12日、すべての預金者を保護するという異例の措置を発表し、バイデン米大統領も大手行への監督・規制強化を継続する方針を改めて示しました。

    今回の2つの銀行の破綻は、顧客や資金調達・運用先の同行の特殊性などが要因となったものとみられますが、急速な金融引き締めが、破綻の原因となったとの見方もあるようです。

    今回の破綻は、3月21~22日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)で、FRBの利上げ幅や今後の政策運営を決定する上での検討材料の1つになるものと思われます。

Ⅲ. チャート(日米の株価と為替)出所:ブルームバーグ社

  1. 米国・NYダウ(ダウ・ジョーンズ工業)(5年間)年初来の騰落率▲5.1%下落

  2. アメリカドル(5年間)

  3. 日経平均株価(5年間)年初来の騰落率4.3%上昇

以上


<著者プロフィール>
乾 晴彦 氏
CFP、1級FP技能士、DCアドバイザー、宅建取引士(旧:宅建主任者)、証券外務員一種資格、終活カウンセラー、PB(プライベートバンキング)資格 昭和31年生まれ。
長年にわたり金融機関でコンサルティング業務を担当後、大手証券会社の人材開発室で、FP・生命保険の社内講師を務める。
現在は、銀行・証券・保険会社をはじめとする上場企業での社員向け営業研修講師、また、大学や大手資格予備校、FP教育機関でのFP研修講師として活動している。シニア層や富裕層向けの研修・相談業務には定評があり全国にファンも多い。

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