日税FPメルマガ通信 第378号

 

Ⅰ. 米国経済 & 日本経済の2023年の見通し

1.米国経済 2023年の前半までは景気減速か

世界の人口が、実質国内総生産は、2022年の10-12月期と2023年の前半は、政策金利の利上げなどを受け景気減速傾向が強まる見通しです。

米国ではインフレの鈍化や米連邦準備理事会(FRB)の利上げペース減速が見込まれる中、2023年の後半は景気回復傾向が見込まれ、2023年のGDP成長率は年間で小幅なプラスが予想されます。

米連邦準備理事会(FRB)は利上げのペースを緩める一方で、政策金利を当面高い水準で維持する方針も示しました。

金融引き締めに積極的なタカ派色を残したのは、賃金上昇を背景にしたインフレ圧力の根強さへの警戒があるためです。

成長率見通しは大きく下方修正され、米国経済の軟着陸(ソフトランディング)は難易度がさらに高まりました。
失業率については2022年12月は3.5%と米国の歴史上では低水準となっていますが、非農業部門雇用者数の伸びは減速(特に、飲食店とホテルなどで人手不足)しています。


一方で、消費者物価指数は11月に前年比7.1%上昇と、10月の7.7%上昇から伸びが鈍化(12月は前年比で6.5%)しました。
それらに加え、今までの利上げの効果を見定める必要があることから、FRBによる今年の利上げは小幅となる見通しです。

金融引き締めにより世界経済の下振れリスクは上昇しているものの、アジア圏主導で人流も含めた経済正常化が進むことから、世界同時不況は回避されるとみています。



2.日本経済 回復基調になると想定、しかし、日銀の金融政策の動向には注意が必要

日本経済は、アジア圏の回復と国内経済活動の正常化などを背景に、回復基調になると想定します。
国内株価は、欧米の金融引き締めを受けた景気後退懸念が重しとなりますが、アジア圏の経済回復が企業業績を下支えするとみられるため、内外の金融政策の不透明感が払拭されるにつれて、底固めから持ち直しの動きに至ると想定します。
ただし、黒田日銀総裁の任期満了が近づく中で、日銀の金融政策の動向には注意が必要です。

日銀が12月の金融政策決定会合で、長期金利の許容変動幅を「±0.25%程度」から「±0.50%程度」へ拡大したことを受けて、大幅に上昇しました。

以降、日銀が臨時の国債の買オペなどを通じて、金利上昇をけん制する姿勢を鮮明にする中、上昇幅は縮小して終えました。
日銀の金融政策のさらなる修正観測などから金利上昇圧力がかかる可能性には留意が必要です。

もっとも、日銀は金利上昇を抑制する姿勢を鮮明にする中、マイナス金利や長期金利の誘導目標といった異次元緩和の解消に向けた道筋も示す必要がある等、他市場や政治サイドへの配慮を求められております。

そのため、金融政策正常化の動きは相応に時間がかかると想定します。よって、金利は徐々に落ち着きを取り戻す流れになると考えられます。

Ⅱ.日本の2022年の貿易赤字
1年間で最大の19.9兆円、円安と資源高響く。

1.原油などの輸入額が大幅に増えた

財務省が、2023年1月19日に発表した2022年の「貿易統計速報」によると、輸出額から輸入額を引いた貿易収支は1年間で19兆9713億円の赤字でした。

比較が可能な1979年以降で最大の赤字となりました。その主な要因は、円安と資源高で輸入額が大幅に増えたためです。

※貿易赤字は2年連続です。2014年の12兆8160億円を上回り最大の赤字に。

輸入は前年比39.2%増の118兆1573億円で、100兆円の大台を初めて超えました。
原油や液化天然ガス(LNG)、石炭などの値上がりが響きました。こうした鉱物性燃料の輸入は96.8%増の33兆4755億円で、全体の28.3%を占めました。

原油の輸入価格は1キロリットル当たり8万4728円で76.5%上がり、過去最高になった。ドル建て価格の上昇率は47.6%でした。

2.輸出:18.2%増の98兆1860億円で過去最高を更新

米国向けの自動車やメキシコ向けの鉄鋼などが増えましたが、輸入の伸びに追いつかず大幅な赤字となりました。

地域別の貿易動向をみると、対アジアは輸入が29.8%増の53兆3327億円、輸出は15.1%増の55兆4106億円でした。対米国は輸入が31.5%多い11兆7230億円、輸出は23.1%多い18兆2586億円となりました。

エネルギー資源の値上がりによって、中東からの輸入は、82.1%増の15兆4265億円に達しました。オーストラリアからの輸入も11兆6243億円に倍増しました。

2022年12月単月の貿易収支については、1兆4484億円の赤字でした。

赤字は17カ月連続で、12月としては最大の赤字となりました。輸入は前年同月比20.6%増の10兆2357億円、輸出は11.5%増の8兆7872億円でした。

やはり、石炭や原油などの輸入額が膨らみ、大幅な赤字が続きました。

また、2022年12月は中国向けの輸出が1兆6178億円と前年同月比6.2%減りました。

減少は7カ月ぶりです。特に、自動車や自動車部品が減りました。その背景は、新型コロナウイルスの感染拡大などが影響したとみられます。


Ⅲ. 日銀が1月17~18日の金融政策決定会合後に公表した
 「経済・物価情勢の展望」

1.2022年度の物価見通しを昨年10月公表時点の2.9%から3.0%に引き上げた

政府・日銀が目標として掲げる2%を上回ります。ただし、2023年度は1.6%に据え置き、「(2%目標を)安定的に達成できる状況になっていない」(黒田日銀総裁)として緩和縮小を見送りました。

2022年12月の前回会合では、0%程度からプラスマイナス0.25%としていた長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大しました。人為的に長期金利を抑えてきたため、金利のカーブで10年債の利回りだけ不自然に低くなる「ゆがみ」が生じ、企業の社債発行などに悪影響が出る懸念が高まっていました。


2.次回の2023年3月の決定会合前にも再び修正観測が広がる可能性は高い

日本のインフレ率が、中長期でも政府・日銀の掲げる2%の物価目標に近づくなか、日銀が異次元緩和を続ける理由は一段と乏しくなっています。よって、次回の3月の決定会合(黒田日銀総裁の最後の会合:2期・通算で10年間の任期)前にも再び修正観測が広がる可能性は高い。市場との攻防は一段と激しくなりそうです。

Ⅳ. チャート(日米の株価)出所:ブルームバーグ社

1. 日経平均株価(225種):
1月20日(5年間)
2022年の騰落率 ▲9.4%




2.ニューヨークダウ(米国):
1月20日時点(5年間)
2022年の騰落率 ▲8.8%





<著者プロフィール>
乾 晴彦 氏
CFP、1級FP技能士、DCアドバイザー、宅建取引士(旧:宅建主任者)、証券外務員一種資格、終活カウンセラー、PB(プライベートバンキング)資格 昭和31年生まれ。
長年にわたり金融機関でコンサルティング業務を担当後、大手証券会社の人材開発室で、FP・生命保険の社内講師を務める。
現在は、銀行・証券・保険会社をはじめとする上場企業での社員向け営業研修講師、また、大学や大手資格予備校、FP教育機関でのFP研修講師として活動している。シニア層や富裕層向けの研修・相談業務には定評があり全国にファンも多い。

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