世界の人口が、2022年11月15日、80億人の大台に到達した。国連の推計によると、70億人に達した2010年から12年間で10億人増えた。出生率の低下などで人口増加率は鈍化が進んで、2020年に戦後初めて1%を下回った。新興国を含めて幅広い国々で少子高齢化が進む中、持続的な経済成長の実現が今後の世界経済の課題となる。
国連では、高齢化や人口減少に対応した包摂的な社会の構築を呼びかける。
世界経済の失速が気になってきた。特に、中国では新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策などの影響で2022年の成長率見通しが年初の予測を2ポイント近く下回り、3%台になっている。
直近2022年10月においては、消費が減少に転じた。また、米国と欧州では歴史的な物価高で急速な利上げを迫られ、2022~2023年に景気後退に入るとの予測が広がる。また、日本は7~9月期に4四半期ぶりのマイナス成長に陥った。
2022年の中国の実質成長率は3.3%だ。年初の予測から1.8ポイント下がった。上海市の封鎖(3月28日から5月末までの約2か月間)などで春に景気が急激に悪化した後、夏場に出てきた持ち直しの兆しが足元で再びしぼむ。
中国国家統計局が、11月15日発表した10月の小売売上高は前年同月比0.5%減った。マイナスは2022年5月以来である。全体の1割を占める飲食店収入が8%減ったほか、家電、衣類などが軒並み落ち込んだ。
また、インフレ鈍化により安定を取り戻し始めた米国の株式市場はインフレのピークアウト観測の浮上により安定を取り戻し始めている。
11月10日に公表された10月の米消費者物価指数(CPI)が前年同月比+7.7%と、市場予想を下回ったことで、足元でインフレ加速と一段の金融引き締めへの懸念が後退しつつあるとみられる。
具体的には、2022年10月CPIでは食品・エネルギーを除くコアが前月比+0.3%と大きく下振れた。特に、住居費の高い伸びを含むサービス価格を財価格が相殺する構図が見え始めた。
※今後のインフレの行方のカギとなる住居関連:2022年10月も前年同月比+6.9%と高い伸びを示している。しかし、足元の米国の賃貸住宅市場では家賃上昇率の鈍化が顕著となっており、今後は住居費にも家賃上昇率の鈍化の影響が遅れて現れる可能性も大きい。
日本の7月9月期の実質GDP成長率は、前期比年率▲1.2%と4四半期ぶりのマイナス成長となった。新型コロナ感染拡大の影響で消費が減速したほか、輸入の増加がマイナスに寄与した。10月12月期以降は、経済活動再開の本格化やインバウンド消費の復活により再拡大を見込む。
自動車の生産回復が期待されるほか、為替の円安進行や米中の2つの大国の分断への懸念などから生産の国内回帰の動きも期待される状況となってきた。
米国の利上げペースの鈍化の方向への期待が影響した。しかし、グローバルに景気悪化リスクがある中、水際対策の緩和によるインバウンド回復期待など分かり易いプラス要因がある点は強みであり、不確実性上昇時に選好され易いと考える。
米国では家賃や賃金の上昇、欧州では天然ガスなどエネルギー価格上昇等によりインフレが進行し金利が大幅に上昇するなど、景気の先行きに対する不透明感が高まっている。
また、中国では不動産価格下落や「ゼロコロナ」政策などによる景気の停滞が続いている。一方、日本は経済活動の再開が本格化しつつあり、インバウンド消費回復や自動車の挽回産などが期待され、相対的に優位な状況にある。
内閣府が2022年11月15日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.3%減、年率換算で1.2%減だった。マイナス成長は4四半期ぶりである。個人消費は新型コロナウイルスの第7波などの影響で伸び悩み、前期比0.3%増にとどまった。市場ではプラス成長が続くとの見方が大勢を占めていた。マイナス成長に転落した主因は外需である。前期比の寄与度はマイナス0.7%。GDPの計算で差し引く輸入が5.2%増え、全体を押し下げた。特にサービスの輸入が17.1%増と大きく膨らんだのが響いた。
内需のもう一つの柱である設備投資は1.5%増であり、2四半期連続で伸びた。企業がコロナ禍で持ち越した分の挽回も含め、デジタル化や省力化の投資を進めている。
住宅投資は0.4%減で5四半期連続のマイナス。建築資材の高騰が影を落としている。公共投資は1.2%増と2四半期連続で増えた。2021年度補正予算や2022年度当初予算の執行が進んだ。コロナワクチンの接種費用を含む政府消費は横ばいだった。
1. 日経平均株価(225種):
2022年11月29日(5年間)
年初来騰落率 ▲1.8%
政策金利を上げない日本:下落率が低い
(黒田日銀総裁のコメント)
2.ニューヨークダウ(米国):
2022年11月29日(5年間)
年初来騰落率 ▲5.9%
<著者プロフィール>
乾 晴彦 氏
CFP、1級FP技能士、DCアドバイザー、宅建取引士(旧:宅建主任者)、証券外務員一種資格、終活カウンセラー、PB(プライベートバンキング)資格 昭和31年生まれ。
長年にわたり金融機関でコンサルティング業務を担当後、大手証券会社の人材開発室で、FP・生命保険の社内講師を務める。
現在は、銀行・証券・保険会社をはじめとする上場企業での社員向け営業研修講師、また、大学や大手資格予備校、FP教育機関でのFP研修講師として活動している。シニア層や富裕層向けの研修・相談業務には定評があり全国にファンも多い。
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