日税FPメルマガ通信 第373号

インカム確保の次の一手
「優先株預託証券」の魅力を解説する

2022年11月21日発行

 

優先株預託証券という商品はご存知ですか?

この記事ではインカムゲインをメインで狙っている人向けに、高利回りで運用できる優先株預託証券の特徴、メリットとデメリットについて解説しています。

1.優先株預託証券とは?

優先株預託証券を理解するために、まずは優先株と預託証券についてそれぞれ理解をしましょう。

・優先株
議決権がない代わりに、普通株にくらべて配当金や会社精算時の残余財産を優先的 に受け取れる株式のことです。株主の権利内容が優先的になっている点が特徴です。

・預託証券
企業が自国以外の国で株式を流通させるために、自国で発行した株式を信託銀行などに預け、これを担保に発行する株式のことです。

(例)資金調達力を高めるために、米国市場に上場したい日本企業(A社)があったとします。

まず、米国の銀行など(B銀行)がA社の株式を購入。B銀行はA社の株式を日本の信託銀行に保管します。この日本の信託銀行で保管している株式を裏付けとして、預託証書を発行することで、日本企業の株式が米国市場で売買できるようになります。

つまり優先株預託証券とは、優先株を裏付けとして発行された預託証券のことです。

発行体が発行できる優先株の株数には上限があり、上限を超える株式を発行するときは株主の承認が必要になります。そのため、より投資家層を広げるためには、預託証券という形で発行する必要があるのです。

2.優先株預託証券の特徴

優先株預託証券は、一定期間、予め定められた配当率で配当金を受け取るものが多く、企業の各期の業績で配当額が変動することはありません。商品性としては、債券に近いものと言えるでしょう。

ただ、優先株預託証券はあくまでも株式として扱われるため、配当金が支払われなくてもデフォルトになることはありません。そのため、発行体の財務内容の状況によっては配当金が支払われないことがあります。

また、一般的な債券のように予め決められた償還日はなく、所定の日に発行体の任意で額面100%が繰り上げ償還される可能性があります。

優先株預託証券の配当率
初回コール日まで配当率は変動しませんが、初回コール日に繰り上げ償還されなかったときは、それ以降、配当率は変動します。 なお、初回コール日までの期間の目安は約2年~5年です。

3.優先株預託証券のイメージ

■参考購入単価:89.38
■参考購入為替レート:1米ドル=138.52
■購入額面10,000ドル
■初回コール利回り 9.962%
■初回コール日(2025年1月30日)

概算購入時必要額(円)138.52×10,000×89.38%=約1,238,092円

初回コール日までの配当金受取額合計 116,635円、初回コール後は、配当金が変動するため不明です

4.優先株預託証券のメリット

優先株預託証券のメリットは以下の2つです。

・債券よりも高い利回りが期待できる
優先株預託債券は発行体が破綻したときの弁済順位が低いというリスクを取る代わりに、利回りが高いという特徴があります。また、初回コール日までは配当率が変動しないため、安定したリターンが期待できます。

・NISA口座でも運用できる
NISA口座でも運用できるため、配当金に課税されることなく、運用益をそのまま受け取ることも可能です。

5.優先株預託証券のデメリット

・発行体の破綻リスクが大きい
優先株預託証券は、発行体が破綻した場合の法的弁済順位が、普通債券や劣後債よりもさらに低い商品です。優先株預託証券の発行体が破綻をしたときは、資金を回収することが極めて低いことになります。

・配当金が支払われないことがある
優先株預託証券は、株式に近い性質を持っているため、発行体の業績が悪いと配当が支払われないことがあります。

6.まとめ

優先株預託証券はあまり馴染みのない人が多いかも知れませんが、償還金がない高配当が魅力的な商品です。

株式の配当金や投資信託の分配金のようなインカムゲイン狙いの投資家の新たな一手として、利用を検討してみてはいかがでしょうか?


<著者プロフィール>

福田 猛

ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役

大手証券会社を経て、2012年に金融機関から独立した立場で資産運用のアドバイスを行うIFA法人ファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。資産形成・資産運用アドバイザーとして現役活躍中。2015年楽天証券IFAサミットにて独立系アドバイザーとして総合1位を受賞。東京・横浜を中心に全国各地でセミナー講師としても活躍し、大好評の「投資信託選びの新常識セミナー」は開催数240回を超え、延べ8,000人以上が参加。新聞・経済誌等メディアでも注目を集める。著書に『投資信託 失敗の教訓』(プレジデント社)等がある。


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参考

経済金融情報メディア「F-Style」:https://fstandard.co.jp/column/

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