総務省が、2022年8月19日に発表した7月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が102.2となり、前年の同月比で2.4%上昇しました。これは、消費増税の影響があった2014年12月(2.5%)以来、7年7カ月ぶりの上昇率で、4カ月連続で2%台となりました。その背景は、原油などの資源高や円安でエネルギーと食料品の上昇が続いているためです。
物価の上昇は11カ月連続となりました。生鮮食品を含む総合指数は2.6%、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は1.2%それぞれ上昇しました。生鮮を除く総合の522品目のうち、上昇した品目は376、変化なしが45、低下が101でした。上昇品目は前月の365から増えました。
最も物価を押し上げたのは、電気代などのエネルギーでした。その上昇率は、16.2%と、6月(16.5%)に引き続き2桁の伸びでした。エネルギーだけで総合指数を1.22ポイント押し上げました。
内閣府が、2022年8月15日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で、前期比で0.5%増、年率換算で2.2%増でした。新型コロナウイルス対策のまん延防止等重点措置の解除により、個人消費が回復して全体を押し上げました。また、企業の設備投資も伸びました。実質GDPの実額は、542.1兆円と、コロナ前の2019年10~12月期(540.8兆円)を超えました。内需の柱で、GDPの半分以上を占める個人消費は前期比1.1%伸びました。外食や宿泊などのサービス消費は1.4%、自動車などの耐久財は0.3%、衣服などの半耐久財は3.9%それぞれ増えました。
1~3月期は首都圏などでまん延防止等重点措置が出て、個人消費が鈍っていました。重点措置は3月下旬に全面解除となり、4月下旬からの大型連休も3年ぶりに行動制限がなかったのが、GDPが回復した主な背景です。
内需のもう一つの柱である企業の設備投資は1.4%増で2四半期ぶりにプラスとなりました。企業収益の改善をうけ、デジタル化に向けたソフトウエア投資が増えました。
住宅投資は、1.9%減で4四半期連続のマイナスでした。建築資材の高騰で前期(1.4%減)よりマイナス幅が拡大しました。
中国の雇用環境の改善がもたついています。2022年7月の失業率は5.4%と前年同月を上回り、若年層に限ると過去最高を更新しました。
新型コロナウイルスの感染が一部都市で再拡大したことで移動制限が強まり、内需の回復が遅れています。企業や家計は先行き不安を拭えず、年後半の景気復調というシナリオに狂いが生じかねません。中国国家統計局が、8月15日の2022年7月の主要統計を発表しました。前年同月と比べた増加率は工業生産が3.8%、小売売上高が2.7%でした。いずれも市場予想に反して、6月の伸びより縮まりました。
江西省では、農業用水や飲料水不足の被害が138万人に及びました。重慶でも35万人以上が影響を受け、人工降雨を試みました(雲が薄すぎて計画が実行できない地域もあり、成果は厳しい)。
四川省では空調のための電力需要が高まる一方で、水力発電の水が不足しています。当局は「企業が市民に電力を譲る」とのスローガンを掲げ、工業用電力の供給を制限し、多くの企業に8月15~20日の生産を停止するよう指導しました。
2021年1月に発足したバイデン米政権の最初の審判となる今年11月8日の中間選挙まであと2か月あまりです。高止まりするインフレは政権運営の足を引っ張り、バイデン大統領が得意と自負する外交にもマイナスの影響が及びました。与党である民主党の下院での多数派維持は絶望視され、上院でも厳しい戦いが続きます。バイデン氏(11月に80歳に)は崖っぷちに追い込まれています。
その背景には、
①記録的なインフレに見舞われ住宅価格や家賃が急騰し、低・中所得者らを直撃
⇒ バイデン大統領は「中間所得層の再生」を掲げて就任しましたが、住宅危機は深まるばかりです。11月の中間選挙では有権者の不満が噴出し、政権の逆風となりかねない情勢です。
若年層、住宅価格が高過ぎて手が出ずの状況に。
初めての持ち家購入者は、従前は住宅市場の4割を占めましたが、現在は3割程度です。住宅購入希望者の多くが、価格・金利の上昇で、借家住まいを続けざるを得ない状況は、賃貸住宅の家賃も押し上げる要因ともなります。
米国民の持ち家志向は強い傾向があります。よく自分の家を買うのは、「アメリカン・ドリーム」だと言われます。
バイデン氏は7月、原油価格低減に向けた増産の約束を当て込み、サウジアラビアを訪問しました。しかし、サウジ側の賛同は得られず、ロシアも参加する石油輸出国機構(OPEC)プラスが8月3日に合意した増産幅はわずか日量10万バレルと期待外れに終わりました。
1. 日経平均株価(225種):
2022年8月22日時点(5年間)
年初来騰落率 ▲0.9%
政策金利を上げない日本:下落率が低い
(黒田日銀総裁のコメント)
2.ニューヨークダウ(米国):
2022年8月22日時点(5年間)
年初来騰落率 ▲8.3%
<著者プロフィール>
乾 晴彦 氏
CFP、1級FP技能士、DCアドバイザー、宅建取引士(旧:宅建主任者)、証券外務員一種資格、終活カウンセラー、PB(プライベートバンキング)資格 昭和31年生まれ。
長年にわたり金融機関でコンサルティング業務を担当後、大手証券会社の人材開発室で、FP・生命保険の社内講師を務める。
現在は、銀行・証券・保険会社をはじめとする上場企業での社員向け営業研修講師、また、大学や大手資格予備校、FP教育機関でのFP研修講師として活動している。シニア層や富裕層向けの研修・相談業務には定評があり全国にファンも多い。
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