最近「FIRE」という言葉を耳にする機会が増えたという方もいるのではないでしょうか。
FIREは火という意味の英語ではなく、経済的自立と早期退職を組み合わせた「Financial Independence, Retire Early」の頭文字で構成された言葉です。
この記事では、FIREを実現するための資産運用について解説していきます。
年金支給開始年齢や定年年齢が引き上げられ、60歳を過ぎても元気で仕事を続けたいという方も多いでしょう。しかしその一方で、できれば早いタイミングでリタイアし、その後の人生を存分に楽しみたいという方もいるのではないでしょうか。
FIREとは「Financial IndependenceとRetire Early」の頭文字を取った言葉で、経済的自立を果たすことで早期退職を実現し、リタイア後は資産運用などで生活に必要な収入を得ながら、自由に過ごす時間を増やすという生き方のことです。
FIREはもともと欧米を中心に広まった考え方ですが、最近では日本でも注目されています。
日本でも以前から定年を待たずに早期退職をする方はいましたが、リタイア後は預貯金や退職金を少しずつ切り崩しながら生活するというスタイルが一般的でした。
一方で、FIREは経済的自立を前提としているため、リタイア後は手元にある資産を切り崩して生活するのではなく、資産運用によって生計を立てることを目標としています。
FIREが目指す経済的自立は、節約、貯蓄、資産運用によって収入に関係なく誰にでも実践することができます。また、完全に仕事を辞めることが難しい方や、好きな仕事を適度に続けながらゆとりのある老後を過ごしたいという方は、勤労収入と資産運用による運用益で生計を立てる「サイドFIRE」という方法もあります。
◆FIREの4%ルール
FIREには「4%ルール」と呼ばれているものがあります。
4%ルールとは、1年間にかかる生活費の25倍(25年分)の資産を運用資金とし、年4%で運用することで、手元資産を減らすことなく運用益だけでリタイア後の生活費を賄うことができるというものです。
例えば、1年間の生活費が360万円という方の場合、FIREのために360万円の25倍、9,000万円分の資産を作ります。9,000万円を年4%で運用できれば360万円の運用益を手にすることができ、理論上は資産を減らさずに生活費を賄うことができます。
◆FIREのメリット
FIREのメリットには、以下のようなことがあります。
・働くか働かないかを自分で選択できる
・住む場所や暮らし方を自由に選択できる
・経済観念やお金を管理する力が身につく
FIREを実現することで得られる最も大きなメリットは、リタイア後の人生の過ごし方を自分で自由に選択できるという点にあります。FIREは、必ずしも仕事を辞めなければならないということではありません。生計を立てるために働くのではなく、人生を楽しむために好きな仕事を続けたいという方もいるでしょう。
仕事に縛られることがなければ、働き方はもちろん、住む場所や暮らし方もすべて自分自身で選択できるため、幸福感や充実感のある自由な人生を送ることができます。
また、FIREを実現するためには投資に回す資金を用意する必要があり、支出をコントロールしながら資産を形成していく必要があります。若いうちから少しずつ資産運用を行い、節約をしながらFIREの実現を目指す過程で、自然と経済観念やお金を管理する力が身についていくでしょう。
◆FIREのデメリット
FIREのデメリットには、以下のようなことがあります。
・早期退職後の再就職は難しい可能性がある
・運用資金を貯めるのが難しい
・必ず4%の運用益が得られるわけではない
FIREを実現した後、仕事を辞めることで社会とのつながりが無くなったと感じたり、思ったほどの運用益が入らず生活が苦しいなどの理由から、「やっぱり働きたい」と考える方もいるようです。しかし、早期退職後の再就職となると、以前と同じ職種やポジションで仕事が見つかるとは限らないため、再就職は難しいケースも考えられます。
また、そもそも運用資金が無ければFIREは実現できないため、運用資金を貯めるために節約をしたり、生活費を削って運用資金に回したりする過程でストレスを感じる方もいるでしょう。
頑張ってリタイアを実現したとしても、必ず4%の運用益が得られるというわけではありません。資産運用が上手くいかなければ、生活が破綻してしまうリスクも理解しておくことが大切です。
ここからは、FIREを成功させるために必要なことや考えるべきことについて、順を追って説明します。
◆早期退職後に必要な生活費を見積もる
前述の通り、FIREの4%ルールを実行するためには、1年間にかかる生活費の25倍の運用資金を用意する必要があります。そのため、まずは退職後に必要となる生活費を把握することから始めましょう。
必要な生活費は人によって異なります。また、現在の生活費をベースに考えるのではなく、子どもの学費や親の介護費など、ライフイベントによって必要になるお金も考慮しておくことが大切です。急な出費に対応できなければ、リタイア後の生活が破綻してしまうリスクが高まるため、注意しておきたいポイントです。
◆運用資金確保に向けて貯蓄をする
1年間にかかる生活費の目安がでたら、その25倍の運用資金を確保する方法を検討しましょう。4%ルールを目安にFIREの実現を目指す場合、年間の生活費が300万円なら7,500万円、360万円なら9,000万円が目標資金となります。
これだけの運用資金を確保するには、できるだけ若いうちから貯蓄を始めることが大切です。無駄なお金を使わないよう節約し、将来のためにコツコツとお金を貯めていく努力は必要となります。
◆投資・資産運用を始める
FIREを成功させるためには、コツコツと預貯金を増やすだけでなく、資産運用や投資によって資産を増やすことも検討してみてはいかがでしょうか。
手元資金を減らすことなく確実に増やしていきたい方は、複利効果のある金融商品や、つみたてNISA、iDecoなど節税メリットのある金融商品を活用するのがおすすめです。
FIREの成功には、資産運用に関する知識や経験も求められます。若いうちからFIREを意識して資産運用を始めることで、知識や経験も自然と身についていくでしょう。
FIREを目指して資産運用を始める場合、いくつか注意しなければならないこともあります。
例えば、FIREの実現に運用資金確保は不可欠ですが、効率の良い資産形成を行うためには、節約してせっかく貯めたお金を減らさずに増やすことが重要です。
金融商品にはハイリスク・ハイリターンの商品や、ローリスク・ローリターンの商品があるため、リスクとリターンのバランスを考えながら資産運用を行う必要があります。確実性を重視しすぎてしまうと、効率的に資産を増やすことが難しく、反対に短期間で資産を増やそうとし過ぎてしまうと、資金を減らしてしまうリスクが高まります。
特に初めて資産運用をするときは、できるだけ少額から始めて様子を見たり、プロに相談して最適な資産運用の方法についてアドバイスを受けるのもおすすめです。
<著者プロフィール>
福田 猛
ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役
大手証券会社を経て、2012年に金融機関から独立した立場で資産運用のアドバイスを行うIFA法人ファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。資産形成・資産運用アドバイザーとして現役活躍中。 2015年楽天証券IFAサミットにて独立系アドバイザーとして総合1位を受賞。 東京・横浜を中心に全国各地でセミナー講師としても活躍し、大好評の「投資信託選びの新常識セミナー」は開催数240回を超え、延べ8,000人以上が参加。新聞・経済誌等メディアでも注目を集める。著書に『投資信託 失敗の教訓』(プレジデント社)等がある。
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参考
経済金融情報メディア「F-Style」:https://fstandard.co.jp/column/
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