(1)IMFは2022年の世界の成長率前年比+3.6%
前回の2022年1月時点の予想から0.8ポイントの大幅下方修正 ⇒これはロシアによるウクライナ侵攻と新型コロナウイルスの感染拡大による中国(特に、人口2,400万人の上海)のロックダウンを受けたものである。
(2)2022年の先進国の成長率:同+3.3%と
0.6ポイントの下方修正
・米国は0.3ポイントの下方修正である。
・ユーロ圏では、ロシアからのエネルギー依存度が高いドイツ(欧州で第1位のGDP、詳細は後で)が1.7ポイントと大きめの下方修正となった。
第2次世界大戦後、日本と同じように工業国としての地位を築いてきたドイツ。しかし、電力を巡っては大きく異なる道を歩んでいる。
2022年2月27日、ドイツのショルツ首相はロシアのウクライナ侵攻を受けて、ロシア産ガスへの依存度を引き下げるためにエネルギー政策を大きく転換する方針を示した。
「わが国は個別のエネルギー供給国からの輸入に依存している状況を克服するため、方針を転換しなければならない」とドイツ国民に訴えた。
2022年4月21日、5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の利上げ(当初は0.25%:それほど物価上昇(ウクライナ情勢緊迫化による原油高騰の影響などで2022年3月は、予想は8.4%に対し前年比で8.5%)圧力は高いまま急な物価上昇)を実施する可能性を示唆した。
5月会合では、量的引き締め(QT)も決まる予定である。米ハリス・フィナンシャル・グループのジェイミー・コックス氏は、「FRBが0.5%の利上げを示唆すると、市場は直ちに0.75%の可能性を織り込み始める」と引き締めの加速を警戒する。
引き締めが景気を冷やすとの懸念が強まり ⇒ 景気敏感株や消費関連株で売りが目立った。
例えば、スポーツ用品のナイキは5%安、建設機械のキャタピラーは7%安となった。また、金融株も大きく売られ、ゴールドマン・サックスは4%安だった。
金利上昇で割高感が意識されやすいハイテク株など高PER(株価収益率)銘柄も売られた。
⇒企業物価指数の前年比伸び率は、1981年以降最大となった2月に続き、高い水準を維持している。市場予想は9.2%の上昇だった模様である。
・背景:ロシアによるウクライナ侵攻が始まったのが2月24日
⇒これを受けて原油価格がさらに上昇圧力を強め、WTI先物価格(原油)は、3月1日に100ドルを突破し、3月8日に一時129.44ドルまで上昇した。
エネルギー価格高騰の影響等により4月CPIの伸び率が、 2%に到達する可能性が高いことに加え、円安進行で日米の金融政策の違いが一層意識されたことが原因。
その一方で、需給ギャップは依然マイナスであり、日銀が言う「賃金と物価が持続的に上昇していく好循環」に至ったとは言えず、早期に金融引き締めに転じるロジックはまだ見えない。
・止まらぬ原材料高騰に対し企業の価格転嫁が十分に進んでいない。
・総務省が4月22日に発表した3月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が100.8と前年同月に比べて0.8%上昇した。
41年ぶりの高水準にある企業物価指数の伸びとの差はなお大きく、価格転嫁の遅れは企業業績の重荷になりかねない。
<著者プロフィール>
乾 晴彦 氏
CFP、1級FP技能士、DCアドバイザー、宅建取引士(旧:宅建主任者)、証券外務員一種資格、終活カウンセラー、PB(プライベートバンキング)資格 昭和31年生まれ。
長年にわたり金融機関でコンサルティング業務を担当後、大手証券会社の人材開発室で、FP・生命保険の社内講師を務める。
現在は、銀行・証券・保険会社をはじめとする上場企業での社員向け営業研修講師、また、大学や大手資格予備校、FP教育機関でのFP研修講師として活動している。シニア層や富裕層向けの研修・相談業務には定評があり全国にファンも多い。
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