日税FPメルマガ通信 第360号

 

Ⅰ. 株価のチャート  出所:ブルームバーグ社

1. 日経平均株価(225種):5年間         2. ニューヨークダウ(30種):5年間
 2022年4月23日現在                2022年4月23日現在

Ⅱ. 国際通貨基金(IMF)
  :4月19日、最新の世界経済見通しを発表(1年に4回)

    <ポイント>

    (1)IMFは2022年の世界の成長率前年比+3.6%

    前回の2022年1月時点の予想から0.8ポイントの大幅下方修正 ⇒これはロシアによるウクライナ侵攻と新型コロナウイルスの感染拡大による中国(特に、人口2,400万人の上海)のロックダウンを受けたものである。

    (2)2022年の先進国の成長率:同+3.3%と 0.6ポイントの下方修正

    ・米国は0.3ポイントの下方修正である。

    ・ユーロ圏では、ロシアからのエネルギー依存度が高いドイツ(欧州で第1位のGDP、詳細は後で)が1.7ポイントと大きめの下方修正となった。


    <ロシアによるウクライナ侵攻(2022年2月24日)が主因で下方修正を 図表1>


    ・先進国の中で唯一経済見通しが上方修正された国:オーストラリア(2020年3月より厳しい入国規制により厳しい出入国制限 ⇒ 2022年4月17日からコロナによる行動制限が解除され、経済再開)だけである。

    (3)2023年:先進国の経済成長がさらに低下する一方、中国の成長が回復(2022年秋の5年に1度の党大会開催を控え、習指導部は景気の下振れや家計の負担増に対して敏感に動くと考えられる)することで、世界経済の成長率は維持される見通しとなった。


    <ドイツのエネルギー事情>

    第2次世界大戦後、日本と同じように工業国としての地位を築いてきたドイツ。しかし、電力を巡っては大きく異なる道を歩んでいる。

    2022年2月27日、ドイツのショルツ首相はロシアのウクライナ侵攻を受けて、ロシア産ガスへの依存度を引き下げるためにエネルギー政策を大きく転換する方針を示した。

    「わが国は個別のエネルギー供給国からの輸入に依存している状況を克服するため、方針を転換しなければならない」とドイツ国民に訴えた。


    <図表2 
    ロシアのパイプラインでの天然ガスの輸出先>


    新たな方針には、ブルンスビュッテルとビルヘルムスハーフェンの2カ所(元はともに原子力や火力発電所があった)に液化天然ガス(LNG)ターミナルを建設する計画が盛り込まれている。

    ドイツは、日本の福島第一原子力発電所の事故を受け、2011年7月8日、アンゲラ・メルケル前首相の強いリーダーシップの下、2022年12月31日までに全ての原子力発電所を廃止する法律を成立させた。

Ⅲ. 米国経済

    米国の政策金利・フェデラルファンド(Federal Funds)金利(5年間)
    2020年のコロナで・トランプ前大統領時のゼロ金利から解除を

  1. FRBのパウエル議長のコメント

    2022年4月21日、5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の利上げ(当初は0.25%:それほど物価上昇(ウクライナ情勢緊迫化による原油高騰の影響などで2022年3月は、予想は8.4%に対し前年比で8.5%)圧力は高いまま急な物価上昇)を実施する可能性を示唆した。



    5月会合では、量的引き締め(QT)も決まる予定である。米ハリス・フィナンシャル・グループのジェイミー・コックス氏は、「FRBが0.5%の利上げを示唆すると、市場は直ちに0.75%の可能性を織り込み始める」と引き締めの加速を警戒する。

    引き締めが景気を冷やすとの懸念が強まり ⇒ 景気敏感株や消費関連株で売りが目立った
    例えば、スポーツ用品のナイキは5%安、建設機械のキャタピラーは7%安となった。また、金融株も大きく売られ、ゴールドマン・サックスは4%安だった。

    金利上昇で割高感が意識されやすいハイテク株など高PER(株価収益率)銘柄も売られた。



  2. ウクライナ情勢が好転すれば ⇒ 株価が反発することが想定される

    米国では、株式市場の注目度は、既に金融政策の方が高い状況にある。

    FRBが迅速に中立金利(FRBの想定:2.375%)まで利上げする意向であること、同時に想定よりも早期にバランスシートの縮小を開始する意向であること、及びウクライナ情勢緊迫化等から、2022年のGDP見通しを引き下げた。

    過去のFRBの利上げ局面と今回を比較して異なる点は、過去は利上げの序盤戦は株価が上昇基調であったのに対して、2022年の今回は早くも調整色が出ていること。
    インフレ率が高いことにより、金融引き締めペースやそれによる景気への影響が注目されていることが原因とみられる。

    従来の金融引き締めサイクルと比べ、金融市場の反応が前倒しされているとも考えられ、この差異は今後も注意が必要とみる。

Ⅳ. 日本国内の今後の経済と物価上昇 企業が転嫁できない現状

    企業物価指数 :2022年3月は、9.5%も上昇
    消費者物価指数:2022年3月は、0.8%上昇

  1. 日銀が2022年4月12日に発表した3月の企業物価指数

    前年同月比で9.5%の上昇となった。

    ⇒企業物価指数の前年比伸び率は、1981年以降最大となった2月に続き、高い水準を維持している。市場予想は9.2%の上昇だった模様である。

    ・背景:ロシアによるウクライナ侵攻が始まったのが2月24日

    ⇒これを受けて原油価格がさらに上昇圧力を強め、WTI先物価格(原油)は、3月1日に100ドルを突破し、3月8日に一時129.44ドルまで上昇した。



    その後は、100ドル近辺で値動きの荒い展開が続いている。
    また、ウクライナは穀倉地帯でもあり、今後は穀物などへの影響も出るとみられ、食料品などにも今後さらに大きな影響が出ることも予想されている。

    また、急激な円安が企業物価指数を押し上げている側面もある。

  2. 今後本格化する2022年3月期決算銘柄

    製造業の比率が高まることで、円安メリットを享受出来る銘柄が増えるものの、部材価格上昇の影響も大きく、ガイダンスリスク(詳細は下記をご参照)は、通常より高い状態にあるとみられる。決算発表時期は慎重なスタンスで挑みたい。

    ※「ガイダンスリスク」とは、上場企業には、四半期ごとの決算発表が義務づけられている。

    ⇒期初に予想した業績に未達の場合や、市場予想を下回る決算を発表した場合などには、失望売りから株価が大きく下がることがある。これら企業のガイダンスによって株価が値下がりすることをいう。

  3. 日銀短観の価格判断DIをみると

    非製造業の販売価格判断DIは低く、価格転嫁の難しさが感じられる

    しかし、今後はコスト増を企業内で吸収せずに価格転嫁が徐々に進むと考えられ(消費者物価)この動きに広がりが見られるかは注目したい。

  4. 日銀金融政策に対する注目度は一段と上昇

    エネルギー価格高騰の影響等により4月CPIの伸び率が、 2%に到達する可能性が高いことに加え、円安進行で日米の金融政策の違いが一層意識されたことが原因。

    その一方で、需給ギャップは依然マイナスであり、日銀が言う「賃金と物価が持続的に上昇していく好循環」に至ったとは言えず、早期に金融引き締めに転じるロジックはまだ見えない。



    ・止まらぬ原材料高騰に対し企業の価格転嫁が十分に進んでいない。

    ・総務省が4月22日に発表した3月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が100.8と前年同月に比べて0.8%上昇した。

    41年ぶりの高水準にある企業物価指数の伸びとの差はなお大きく、価格転嫁の遅れは企業業績の重荷になりかねない





<著者プロフィール>
乾 晴彦 氏
CFP、1級FP技能士、DCアドバイザー、宅建取引士(旧:宅建主任者)、証券外務員一種資格、終活カウンセラー、PB(プライベートバンキング)資格 昭和31年生まれ。
長年にわたり金融機関でコンサルティング業務を担当後、大手証券会社の人材開発室で、FP・生命保険の社内講師を務める。
現在は、銀行・証券・保険会社をはじめとする上場企業での社員向け営業研修講師、また、大学や大手資格予備校、FP教育機関でのFP研修講師として活動している。シニア層や富裕層向けの研修・相談業務には定評があり全国にファンも多い。

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