日税FPメルマガ通信 第357号

投資信託の選び方が知りたい!
ファンド選びのポイントは?

2022年3月22日発行

 

資産形成や老後の蓄えなど、投資信託による運用を検討される方が増えています。
しかし、いざ投資信託をはじめようと証券会社に口座開設をしてみると、いくつものファンドが並んでいるために、どれに投資するべきなのか悩んでしまう方が多いようです。

早く投資をはじめることが有利であるものの、間違ったファンド選びによって損失を出したくない。
こんな悩みを持って投資信託を始められない方のために、投資信託の選び方についてアドバイスをさせていただきます。


1.投資信託の選び方

投資信託の選び方には、絶対的な正解というものは存在していません。
なぜなら、投資信託を選ぶためには、ご自身の投資に対する目標設定が重要で、長期的な投資を基本としてプランに合ったファンドを選ばなければならないからです。

また、投資信託では多くの投資家から集めた資金を使って株式や債券などでの運用が行われますが、その投資対象については事前に目論見書などの説明資料に記載されていますので、必ずチェックする必要があります。
国内外の株式や債券や不動産など投資できる資産も多岐にわたり、それぞれのリスクとリターンの違いがありますので、各ファンドの特徴をしっかりと把握しましょう。

まずはご自身の投資計画やファイナンシャルプランを基本として、ファンドごとの特徴を活かしながら自分にとって最適なものを取捨選択することこそが、投資信託を選ぶポイントです。


2.投資信託の種類

投資信託には、大きく2つの区分があります。


  • 公社債投資信託

    株式を一切組み入れず、国債や社債など公社債を中心に運用する投資信託

  • 株式投資信託

    株式を組み入れて運用することができる投資信託(株式を入れずに運用可)
    投資する地域も様々です。

    国内型・・・国内で発行された株式や公社債・不動産等が主な投資対象
    海外型・・・海外で発行された株式や公社債・不動産等が主な投資対象
    内外型・・・国内および海外で発行された株式や公社債・不動産等が主な投資対象

    特に、海外に投資する投資信託は、基本的に「為替」変動の影響を受けてしまう点は注意してほしいところです。

    インデックスファンドとアクティブファンドの違い

    投資信託は、運用方法によって「インデックスファンド」と「アクティブファンド」に分けられます。

    「インデックスファンド」に投資するメリットは、運用コストが低く、運用される商品の中身がわかりやすいことで投資のイメージがつきやすいことでしょう。
    その反面、デメリットとしては、TOPIXやS&P500など対象となる指数が限られるので、商品の選択肢が相対的に少ない傾向があります。
    アクティブファンドより「低コスト」だから「低リスク」と考えがちですが、必ずしも「低リスク」ではないことは十分認識すべきでしょう。

    日経平均に連動する商品であれば、いくら複数銘柄に分散投資していても、元々指数に連動するよう作られているので、指数が下がれば当然ファンドの基準価額も下がるのです。
    2020年3月の新型コロナショックの際には、日経平均株価が最大30%下落したことを考えれば、インデックスファンドも同じように下がるリスク性商品には違いありません。

    「アクティブファンド」は、基本的には指数を上回るリターンを積極的に目指す運用スタイルのファンドですが、実際には、アクティブ運用の明確な定義はなく、指数に完全に連動しない「非インデックス」タイプをアクティブファンドと呼んでいます。

    「アクティブファンド」のメリットは、なんといっても商品の種類が多いことでしょう。
    設定されている投資信託の9割程度を占めており、バリュー投資やグロース投資などさまざまな運用方法があります。
    経営者の考え方や財務の健全性を重視するファンドやテーマ型もあるため、運用方針に共感できるファンドを選べることも魅力の1つでしょう。
    上手くいけば期待以上のリターンを得られる可能性がありますし、また、常にリスクヘッジを考えながら運用し、下落時に損失を押さえてくれる投資方法は、さすがプロといったところです。

    その一方で、運用の専門家が企業分析・銘柄入替などを行い、投資先選定に手間をかけている点はメリットといえるものの、インデックスファンドの2倍以上もコストがかかっている点においてはデメリットでしょう。

    最終的に、アクティブファンドの運用成績は、ファンドマネージャーの腕次第というところがありますので、初心者の方はインデックス投資に慣れてからの方が良いかもしれません。


    <表1>ファンド別の比較

    分散投資の考え方

    「タマゴを一つのカゴに盛るな」という有名な相場格言があります。
    これは、「タマゴを一つのカゴに盛ると、落とした時に全部割れてダメになるが、複数のカゴに盛っておけば一つが落ちてダメになっても、他のタマゴは影響を受けずに済む」ことを意味します。

    この考えを投資に当てはめると「一つの資産(銘柄)に集中投資すると、その資産が値下がりすると資産全体の値下がりに直結するが、複数の資産に分散投資すれば、そのうちの一つの資産が値下がりしても他の資産でカバーでき、資産全体の値下がりを軽減できる」ことになります。

    機関投資家などの投資スタンスも、一国への集中投資や特定の業種・銘柄への偏った投資を避 け、分散投資を主流としていますが、本当に大切なことは、将来どの資産が上昇または下落するか誰もわからないから分散投資をするのです。

    同様に、数年後の相場の上昇・下降も誰にもわかりません。
    いざ、相場下落のタイミングが来ても、もっと下がるかもという感情に左右され、なかなか投資できないものです。
    その点、「積立投資」は「ドルコスト平均法」の考えにより、毎月一定額を機械的に長期間積み立てることで、「時間の分散」が図られます。

    先述のインデックスファンドとアクティブファンドのように、投資スタイルや値動きが異なる投資信託をそれぞれ保有しても「分散投資」ですし、日本や海外に投資するファンドを組み合わせて保有するのも「国・地域の分散」になります。

    これらの3つの分散投資による投資行動はリスク低減に繋がりますので、十分認識した上で投資信託を選びましょう。


    3.投資信託でファンドを選ぶときのポイント

    具体的にファンドを選ぶ際に参考にするべき情報について解説を進めます。

    ポイント1:ファンドタイプを選ぶ

    投資信託の種類を大きく分けるのが、ファンドタイプです。
    ファンドタイプには、インデックスファンドと呼ばれる指数に連動することを目標にした運用タイプ、指数以上の利益を求めるアクティブファンドに大別されます。
    過去10年ほどは日経平均やダウ平均の伸びが堅調だったことや、運用コストが安いという点もあり、インデックスファンドが人気化している状況ですが、将来に渡って堅調が続くかどうか誰にもわかりません。

    ただ、誰にもわかるという点でいえば、手数料等のコストは最も明確な判断基準です。

    <表1>のとおりファンドタイプでも異なりますし、個別のファンドでは運用期間中の「信託報酬」等のコストが異なっており、コストの多寡は将来的なパフォーマンスに少なからず影響を及ぼします。

    また、どこの販売会社で購入するかによって購入手数料も相違します。

    検討する際には、投資信託のファンドタイプや投資先(国内・海外・国内外など)・コストについて、目論見書やレポート等で必ず確認しましょう。

    ポイント2:純資産総額をチェックする

    ファンドの純資産総額もチェックしておくべきです。
    この「純資産総額」とは、ファンドの規模を示すもので、平たく言うと「投資家から集めた資金からコストを差し引いた総額」のこと。
    投資スタイルや規模が同じようなファンドが2つあった場合、資産規模の大きさが1つの判断材料となり、具体的には「純資産総額」が小さすぎるファンドは選ばない、という判断基準があります。

    とはいえ、「純資産総額」が大きすぎても、ファンドマネージャーがファンドの目的に沿った銘柄での運用が効率的に行えなくなりますし、小さすぎても十分に分散できずに効率的な運用が難しくなります。

    例えば、時価総額がそれほど大きくない、いわゆる「小型株式」を投資対象とする場合、運用額が少ない状態であれば、ファンドマネージャーが目利きした銘柄のみで運用することが出来ますが、純資産総額が大きくなりすぎると、目利きした銘柄だけでは運用を行うことが出来なくなってしまうことが多く、その結果、パフォーマンスを落としてしまう投資信託もしばしばみかけますので、一概に「純資産総額」だけで判断するのは危険です。

    このほか、「ファンド・オブ・ファンズ」「ファミリーファンド」といった仕組みで他のファンドに投資している場合は、純資産総額が小さくても投資先のファンドでしっかり分散投資されているケースもあるので、どのような仕組みで運用されているかも確認する必要があるでしょう。

    ポイント2:純資産総額をチェックする

    意外と見落としがちですが、過去の運用実績についても確認すべきポイントです。
    まずは、株式ファンドに代表される「市場環境によって運用実績が大きく変わるもの」と「市場環境に左右されづらいもの」があるということ理解しておきましょう。
    その上で、過去の実績(リターン)を確認するのはもちろんのこと、その実績(リターン)を上げる中で、どの程度の振れ幅(リスク)があったのか、という点もしっかり調べましょう。

    一般的には、リターンのみに着目してしまう方が多いかと思いますが、一度きりの人生で行う資産運用で大きな失敗をしない為には、それ以上にリスクを確認することが重要です。

    以上3点が投資信託を選ぶ最も重要なポイントです。
    なお、証券会社のオンラインシステムでは、販売額・人気・お奨めといったランキングや診断ツールなどを用意していますが、ご自身の投資計画に合ったファンドを選ぶことを優先してください。


    4.投資信託はつみたてNISAの利用がおすすめ

    さまざまな資産やリスク・リターンなど、投資信託のイメージを掴んだら、最後は「買い方」です。 投資信託には、月1万円など毎月一定額を買付する「積立投資」と、まとまった金額で一気に買う「一括投資」があります。

    投資信託のリターンは、買うタイミングにも大きく左右されます。
    いくら運用実績の良いファンドでも、相場が過熱して基準価額が高い時に買ってしまうと高いリターンは望めませんが、相場が下落して割安な時に買えれば、高いリターンが期待できます。 ですが、高いか安いかの判断はプロであっても至難の業で、割安と思って買ったら、そこがピークだったということはよくある話です。

    このような失敗をしないように、投資タイミングをわけてリスクを抑える投資手法が積立投資なのです。
    この「積立投資」には、つみたてNISAやiDeCoといった譲渡益等が非課税となる優遇制度があるので、上手に資産形成をするためにも賢く利用しましょう。

    例えば、「つみたてNISA」の制度を詳しくご存知でしょうか。
    「つみたてNISA」は、特に少額からの長期・積立・分散投資を支援する非課税制度です。
    対象となる投資信託は、手数料が低水準でほぼ分配金を支払わない等、金融庁が決めた方針に叶った公募株式投資信託・上場株式投資信託(ETF)に限定されているので、投資ビギナーをはじめ幅広い年代で利用しやすい仕組みになっています。


    <表2>つみたてNISAの概要

    <表2>のとおり、毎年40万円を上限として「積立投資」が可能となり、値上がりした後に売却した利益(譲渡益)が、購入した年から数えて最大20年間、課税されません。
    なお、その年に非課税枠の未使用分があっても翌年以降に繰り越せないので、毎月33,333円拠出できる方はこの金額で積立設定した方が良さそうです。
    ちなみに、非課税の20年間が終了した時には、課税口座に払い出されてしまい、翌年の非課税投資枠に移す(ロールオーバー)ことはできないので、ご注意ください。

    「つみたてNISA」については、現時点では2037年までの制度とされているため、投資信託購入もこの年までです。
    よく勘違いされる方がいますが、購入した年ごとに20年間という考え方なので、2037年に購入した投資信託についても20年間(2056年まで)非課税ですから、長期に渡って優遇制度が続くことになります。

    「積立投資」をする場合は、「つみたてNISA」対象商品から選択して非課税制度を活用し、しっかり資産形成を行いたいものですね。



    5.最後に

    投資信託の選び方について、重要なポイントをまとめてご紹介しました。
    資産運用や老後の蓄えなど、皆さまそれぞれの投資目標を具体的に設定することを第一として、数あるファンドの中から最適なものに投資しましょう。
    ただし、どうしても投資信託を選ぶことが難しいと感じられる方は、ネットの情報に踊らされたり、何となくで無作為に選んだファンドに投資することなく、資産運用の専門家に相談することも検討してください。



  • <著者プロフィール>

    福田 猛

    ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役

    大手証券会社を経て、2012年に金融機関から独立した立場で資産運用のアドバイスを行うIFA法人ファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。資産形成・資産運用アドバイザーとして現役活躍中。 2015年楽天証券IFAサミットにて独立系アドバイザーとして総合1位を受賞。 東京・横浜を中心に全国各地でセミナー講師としても活躍し、大好評の「投資信託選びの新常識セミナー」は開催数240回を超え、延べ8,000人以上が参加。新聞・経済誌等メディアでも注目を集める。著書に『投資信託 失敗の教訓』(プレジデント社)等がある。


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    参考

    経済金融情報メディア「F-Style」:https://fstandard.co.jp/column/

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