日税FPメルマガ通信 第352号

 

Ⅰ. 株価のチャート(2021年12月24日現在)

1. 日経平均株価(225種)             2. ニューヨークダウ(30種)
   2021年の年初からの騰落率は4.8%         2021年の年初からの騰落率は17.4%

Ⅱ. 2021年のマーケットの振り返り

  1. 2021年前半の世界のマーケット
    2021年の前半は、米国と欧州を中心に新型コロナのワクチン接種が1年前より進んで、感染拡大が改善の方向に向かい、経済活動の再開の動きが広がりました。特に、米国は、バイデン大統領の政権による現金給付や失業保険の上乗せ給付などの巨額な財政出動により、景気が加速し復活を印象付けました。
    しかし、2020年の世界の経済をけん引した中国は、景気の急回復が一巡して、当局主導による不動産市場引き締め措置が響いた影響で、一気に減速に転じました。

    2021年前半の金融市場は、世界的な経済活動再開を好感してリスクオン(リターンを追求しやすい相場状況)一色となりました。特に、米国の株式市場は、大型景気対策成立により金利上昇の金融政策や、デルタ変異株の不安が広がった年央に上値を重くする場面が見られましたが、金融緩和継続への安心感から、米国市場の株価は高値の更新が続きました。
    一方で、日本の株式市場は国内感染拡大に伴う緊急事態宣言の長期化や中国の株式市場の軟調が重石となり、出遅れ感が目立ちました。

  2. 2021年後半の世界のマーケット

    共産党100周年を迎えた中国では、IT・教育業界への統制の強化をしたり、夏の大洪水の被害、秋の電力不足もあり景気減速が鮮明となりました。しかし、米国では経済正常化の波が広がり安定感を増しました。
    力強い需要と同時に、感染不安が根強い中で、企業が労働力の確保や物流網や生産体制の整備に難航して、供給不足状態が長引いたことによりインフレという新たな難題が浮上した年でした。

    主要国では、物価高の影響を受け金融緩和修正の動きが目立ち始め、特に、米国のFRB(連邦準備理事会)によるテーパリング(資産買入れ額縮小)開始、早期の利上げ観測など金融政策を巡る思惑が交錯して、世界の市場は神経質な展開が続きました。
    さらに2021年の年末は、「デルタ変異株」よりも感染力の高い「オミクロン変異株」の世界的な感染拡大を受けリスク回避的な動き(リスクオフ:リスクが低く、相対的に安全と思われる資産に資金を移す)も一時的に強まりました。


  3. 日本の株式市場
    2021年の日本経済は、新型コロナ対応に追われた一年でした。年初からコロナ感染拡大と緊急事態宣言が繰り返されて、長引く経済活動制限が景気を下押しました。夏場には「デルタ変異株」が蔓延した結果、1年延期された東京五輪も無観客開催となりました。
    しかし、春先に開始したワクチン接種の効果が出て来て、8月下旬をピークに新規感染者数は減少傾向になりました。なお、10月以降は宣言解除を受け、行動制限の緩和が進んできました。
    また、足元の企業業況感は概ね改善しており、特に、内需低迷で出遅れた大企業非製造業が回復しました。ただし、大企業製造業は、自動車業界の減産や半導体不足等が響いいて足踏み状態が見られました。

    2022年以降も世界的な半導体不足は続く可能性がありますが、今後、東南アジアの部品供給は正常化に向かい、今後は自動車業界では増産が見込まれます。
    なお、懸念点としては、経済の正常化で企業の人出不足が進行して、労働生産性の向上に向けた省力化投資やデジタル投資等が企業設備投資を下支えする見通しです。

    岸田首相は、10月上旬の所信表明演説で、新しい資本主義の実現に向け、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」に取り組む姿勢を示しました。
    10月下旬の衆院選挙では自民党が過半数議席を確保しました。さらに、2022年の夏の参院選挙で国民の信任を得られたら、長期政権も視野に入ります。なお、当面は「オミクロン変異株」の懸念もあり、コロナ対応に注力する方針です。

    今後は、資源高の影響により、仕入コスト高が企業収益を圧迫していて、商品市況や企業による価格転嫁の動向には注意が必要です。
    また、中国景気の減速により、日本の輸出全体の2割を占める中国向けの輸出が鈍化する中で、中国当局による景気支援策等も注目されます。

Ⅲ. 2022年のマーケットの見通し

  1. 2022年の金融市場
    世界的な感染収束の鮮明化を背景にリスク選好継続を見込みます。
    特に、米国では景気の急回復一巡が予想される中で、FOMCが景気・雇用回復を最優先に利上げを進められる予定です。

    また、中国では当局の景気安定に向けた政策方針転換により、期待通り持ち直せるかが重要なポイントです。
    世界の政治面では、秋の米国の中間選挙や中国共産党大会を意識した両国間での政治の駆け引きも要注意であります。

    各国でインフレ懸念が根強い中、感染力の高い変異株抑制に向けて、渡航制限やワクチン未接種者への活動制限の導入など正常化機運に水を差された格好です。
    なお、2021年の11月下旬以降は、インフレの一因であった原油高が一服して、また、中国景気に底固めの兆しが少しですが、一部見られ始めた点は、2022年に向けた朗報と考えます。

  2. 虎年の株式相場 過去6回の勝敗は、1勝5敗
    寅の相場格言は「寅千里を走る」といわれます。
    なお、寅年の株式相場の過去は、圧倒的に負け越しております。
    日経平均株価は1950年(昭和25年)以降の平均騰落率が、+1.8%と十二支中10位です。

    過去6回の勝敗は、1勝5敗であり、上昇した年は、ウォーターフロント(河岸・海岸通の土地・水辺:芝浦などの港湾空間の創出)相場と呼ばれたバブル時の1986年のみです。過去6回の寅年の年間騰落率や主な出来事は、以下のとおりです。

    (1)1950年:▲7.3%、主な事件:「朝鮮戦争」(6月)
    (2)1962年:▲0.8%、同:「キューバ危機」(10月)
    (3)1974年:▲11.4%、同:「ニクソン大統領辞任発表」(8月)、「田中角栄首相辞意表明」(11月)
    (4)1986年:+42.6%、同:「チェルノブイリ原発事故」(4月)、「金融ビッグバン」(10月)、
          「国鉄分割・民営化関連法案成立」(11月)
    (5)1998年:▲9.3%、同:「橋本龍太郎首相退陣」(7月)、「ロシア危機」(8月)、
          「日本長期信用銀行の国有化」(10月)
    (6)2010年:▲3.0%、同:「ギリシャ危機の世界への波及」(4月)

    過去を振り返りますと、戦争や国外の危機、国のトップの辞任、銀行の国有化などがきっかけとなっていることが多くありました。また、年後半で10月にボトム(底値)が多いことも特徴であります。2022年の寅年も、もしもこうした出来事がありますと、株式相場においては、下落の年になるかもしれません。


<著者プロフィール>
乾 晴彦 氏
CFP、1級FP技能士、DCアドバイザー、宅建取引士(旧:宅建主任者)、証券外務員一種資格、終活カウンセラー、PB(プライベートバンキング)資格 昭和31年生まれ。
長年にわたり金融機関でコンサルティング業務を担当後、大手証券会社の人材開発室で、FP・生命保険の社内講師を務める。
現在は、銀行・証券・保険会社をはじめとする上場企業での社員向け営業研修講師、また、大学や大手資格予備校、FP教育機関でのFP研修講師として活動している。シニア層や富裕層向けの研修・相談業務には定評があり全国にファンも多い。

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