日税FPメルマガ通信 第350号

 

Ⅰ. 株価のチャートと最新の情報

1. 日経平均株価(225種)           2. ニューヨークダウ(30種)
    2年間(2021年11月26日現在)            2年間(2021年11月26日現在)

Ⅱ. 11月のマーケットに関係する主要な動き

  1. 日本の国政選挙(10月31日の衆院選の結果)と選挙公約
    2021年10月31日の衆院選の結果は、衆院議席の465の中身は、与党の自民、公明両党は過半数となる293議席を確保しました。
    自民党が獲得した議席は261議席と単独で過半数を大きく上回り、国会で法案や予算案を円滑に審議しやすくなるいわゆる絶対安定多数(261議席)に達しました。

    選挙公約の内容は、

    ①自民党は「成長と分配の好循環」を掲げています。「成長」戦略には、科学技術立国の実現や経済安全保障などの今までの政権と同様のメニューが並びます。岸田政権では、新たに「分配」戦略があり、働く人への分配機能の強化を挙げています。
    ②連立を組む公明党は、18歳までの子どもを対象に、1人当たり一律10万円相当を支援する「未来応援給付」を提唱しています。年末に向けて策定される補正予算により、家計を中心に景気下支えが期待されます。


  2. 日本の債券市場
    今後もインフレ圧力の高まりから世界の金利先高観は根強く、上昇圧力がかかりやすいとみられます。
    岸田首相は、大型経済政策を打ち出すとしており、その規模や財源を巡り、約22兆円もの赤字国債の増発への思惑が高まる可能性には一定の警戒が必要です。

  3. 米国の債券市場
    供給制約の深刻化や、エネルギー価格上昇などを背景に米国でも高インフレの長期化懸念が強まっています。

    2022年末までに2回程度の利上げ(1回につきの利上げは、0.25%を想定)を織り込むなど、FRB(米連邦準備理事会)の早期利上げ観測が高まりました。
    2021年10月の米国債券市場では、長期的な期待インフレ率が上昇する中、長期金利の上昇圧力が 強まる場面がありました。

    インフレが高止まりする中、労働市場の改善を示唆する指標が続けば、米国では早期利上げの織り込みが実現する可能性がある点には留意が必要と考えます。もっともパウエルFRB議長は、利上げについては慎重姿勢を崩しておらず時期尚早との見方を示しています。

  4. 業績相場に移行しつつある中で、業績の先行き不透明感が浮上
    新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かう中、資源価格や原材料価格の上昇により、主要国・地域の株式市場は、総じてこの秋から上値が重くなりつつあります。
    株価は、「一株当たり利益×予想PER(株価収益率)」と分解できます。

    予想PERの動きをみると今年に入ると低下傾向で、いわゆる金融相場から業績相場(企業の業績改善が株価をけん引)に移行しつつあることがうかがえます。
    当面、世界的に株式市場は踊り場局面(一時的に値動きが鈍り、足踏み状態)が続く可能性があります。

  5. 米国の雇用情勢
    失業保険の申請件数は解雇の動向を映します。米国の労働省が11月24日発表した

    失業保険申請(季節調整済み)によると、11月14~20日の週間の新規失業保険申請件数は19万9000件で、1969年11月以来52年ぶりの低水準となりました。

    ダウ・ジョーンズまとめの市場予測(26万件程度)を大幅に下回り、新型コロナウイルスの感染拡大が本格化する前の21万件台も下回りました。景気回復に伴う求人増や採用難で労働市場が逼迫し、解雇の大幅な減少につながりました。米連邦準備理事会(FRB)は、金融政策の正常化を進める上で労働市場の回復ぶりに注目しています。2021年10月には就労者数が約53万人増え、失業率は4.6%まで下がりました。労働需要は極めて強く、9月の求人件数は4カ月連続で1,000万件を超えました。


  6. 資源価格の上昇
    (1)天然ガスの価格が上昇
    その背景として、供給不安、気候変動などに伴う貯蔵不足、エネルギー転換政策などが指摘されています。今後、冬季で暖房需要などにより、化石燃料(微生物の死骸や枯れた植物などが、何億年という時間をかけて化石になり、やがて石油や石炭になる)に対する需給が逼迫することを考慮すると、化石燃料価格の高値圏での推移は、当面継続すると思われます。

    (2)原油の価格が上昇
    コロナ禍に伴う先行き不透明感から産油国が、供給増に慎重な姿勢であることのほか、脱炭素社会の実現に向けて原油や石炭などの化石燃料の増産への投資が手控えられて供給力が高まらないなどの要因があります。
    今回の化石燃料(価格の高騰を招いた一因ともされる再生可能エネルギー政策については、投資強化や貯蔵能力の開発支援などの施策が各国で盛り込まれました。
    米政府は11月23日、今後数ヵ月にわたり日本を含む各国と協調して大規模な戦略備蓄の放出を行うと発表しました。しかし、市場がこうした動きを事前に織り込み原油価格が下落していたことに加え、またOPECプラスが米国などの動きに反発し、生産抑制に動く可能性が報じられ、発表後も価格は高止まりとなりました。

Ⅲ. 気になる物価上昇

  1. 米国の物価上昇 来年2022年11月の米国の中間選挙への影響も
    インフレ率の高止まりへの早期対処や歳出法案(1.75兆ドル・日本円で約200兆円規模)の早期成立は、国民に政策遂行能力をアピールする上で重要であると思われます。来年2022年11月の米国の中間選挙に向けた直近の調査では、野党である共和党への期待が、与党・民主党を上回りました。バイデン大統領にとって、歳出法案の成立とインフレ率の抑制を同時に成し遂げることが、最重要事項であると思われます。

    米労働省が2021年11月10日発表した10月の消費者物価指数(CPI、1982~84年=100)の上昇率は、前年同月比6.2%と9月の5.4%から加速しました。上昇幅は1990年11月以来約31年ぶりに6%台に達し、6カ月連続で5%以上の伸びが続きました。モノや人手の不足という供給制約の長期化に加え、賃金やエネルギー価格などが構造的に物価全体を押し上げる恐れも広がってきました。

    なお、中古車価格は26%、ガソリン価格が50%近く上昇し、食品も5%台の値上がりとなりました。変動の大きい食品とエネルギーを除く上昇率も、前年同月比で4.6%と9月の4.0%から拡大し、1991年8月以来の高水準となりました。

  2. バイデン大統領の支持率
    急激な物価上昇が、米国の国民のバイデン大統領への支持離れに繋がっています。

    そのため、就任直後に約55%あったバイデン大統領への支持率は、直近の2021年11月14日の時点では約42%まで低下しています。支持率低下の理由としては、8月末のアフガンからの完全撤退(20年近くの任務の完了)や経済政策への不支持が多く、約半数の国民がインフレ率の高止まりをバイデン政権の失策だと感じています。

  3. 日本の2021年4月から6月期の実質GDP成長率 前期比年率+1.9%に
    サービス消費や半耐久財消費などが増加し、個人消費が大きく押し上げました。
    また、設備投資もプラスに寄与しました。先送りしてきた設備投資の再開やデジタル化への対応などが背景とみられます。

    新型コロナウイルス感染が落ち着いている中、ワクチン接種を2回完了した人の割合は、全人口の7割を超えました。
    ワクチンの普及による感染抑制効果を背景に、飲食や宿泊など対面型サービスを中心に個人消費の回復が期待されます。

    なお、今後は資源価格上昇による原材料費の高騰が、企業収益を圧迫する可能性があります。


<著者プロフィール>
乾 晴彦 氏
CFP、1級FP技能士、DCアドバイザー、宅建取引士(旧:宅建主任者)、証券外務員一種資格、終活カウンセラー、PB(プライベートバンキング)資格 昭和31年生まれ。
長年にわたり金融機関でコンサルティング業務を担当後、大手証券会社の人材開発室で、FP・生命保険の社内講師を務める。
現在は、銀行・証券・保険会社をはじめとする上場企業での社員向け営業研修講師、また、大学や大手資格予備校、FP教育機関でのFP研修講師として活動している。シニア層や富裕層向けの研修・相談業務には定評があり全国にファンも多い。

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