日税FPメルマガ通信 第346号

 

Ⅰ. 株価のチャート

(1)日経平均株価(225種)           (2)ニューヨークダウ(30種)
    2年間(2021年9月27日現在)            2年間(2021年9月27日現在)内閣支持率が低下していた菅首相の事実上の辞意表明(9月3日)を、株式市場は マイナス要因のはく落と解釈されました。

Ⅱ. 米国のFRB:11月の会合でテーパリング決定を示唆。また、来年半ばに終了へ

  1. 概要
    米連邦準備理事会(FRB)は、2021年9月21から9月22日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利(FF金利)の誘導目標レンジを現状の0.00~0.25%に 据え置くことを決定しました。

    FRBの資産買い入れについても、雇用の最大化と物価安定(2022年以降は、2%超でインフレ率が安定に推移することが前提)の目標達成に向けた著しい一段の進展がみられるまでは、現状の買い入れペース(現在、米国債を月に800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を月に400億ドル購入で、合計で月に1,200億ドル、日本円で約13.2兆円)を維持する方針を示しました。



  2. パウエルFRB議長は、米国の雇用が著しい一段の進展を遂げたかについては、FOMC参加者の18人の間で見方に幅がある(9対9に割れた)ことを明かしました。
    なお、自身を含む多くの参加者18人全員が、既に雇用は条件を充足していると判断しており、11月の次回会合におけるテーパリング(月に米国債とMBSの合計で150億ドル、日本円で1.65兆円ずつ減らし2022年半ばには終了)の開始決定を示唆しました。
    また、テーパリングを2022年半ばには終了することが適切であると説明しました。

  3. 雇用の現状
    2021年8月の就業者数の増加幅は鈍りましたが、過去1年半を振り返ると議長の自信の根拠が理解できます。コロナの危機直後、米国の就業者数は一気に約2,200万人減りました。2021年8月には危機前を530万人下回る水準まで戻りました。最悪期から4分の3、昨年末から半分近く雇用が回復した計算であります。


Ⅲ. 中国恒大集団の債券のデフォルトリスクについて

  1. 概要
    中国の不動産開発大手の「中国恒大集団(エバーグランデ)」が、巨額の債務を抱え経営難に陥っていることから、同社が発行する債券のデフォルトリスクが意識されるとともに、金融商品の支払いに困難が生じているとの報道を受け、市場が動揺しています。2021年9月20日の株式市場では、香港のみならず欧米においても投資家のリスク回避姿勢が高まる状況がみられました。
    2021年9月23日の元建て債券の利払い額は、2億3200万元(約39億円)の見込みです。
    なお、中国の中秋節にあたる9月21日、恒大の創業者でトップの許家印(シュウ・ジャアイン1958年生まれ)氏は、「恒大は必ず暗闇から抜け出すことができる」とのメッセージを社員に送り、経営再建を断念しない姿勢を示していました。

    同社が販売した理財商品(比較的安全性が高いと認識されている資産運用商品)が期限までに全額は償還されず、投資家が本社に押しかけたと報じられたことも市場参加者の不安をあおる要因となりました。
    景気対策として実施されてきた金融緩和などを背景に、一部都市において不動産バブルが懸念される状況がみられます。

  2. 中国恒大集団とは
    不動産業を中心としたコングロマリット企業であり、2019年基準の中国民営企業売上高ランキング(出所:中華全国工商業聯合会)では、第6位に位置する大手企業グループです。
    同社は積極的な経営で規模を急拡大させて来ましたが、新型コロナウイルスによる世界的な景気減速や、中国政府による不動産業への融資規制などの影響で資金繰りが厳しくなっているとみられています。

    「中国恒大集団」は、中国の国内でも極めて異質な存在です。
    もともと、中国恒大集団は、大規模な都市開発プロジェクトを手掛ける一方、少ない資本で借金を膨らませる高レバレッジな経営を特徴とした不動産会社として知られていました。

    他にも高レバレッジ経営の不動産会社は存在していましが、他の会社は、中国政府が主導する負債削減の流れの中で、事業を縮小したり、低レバレッジに舵を切る一方で、同社はそれでも引き続き強気な路線を続けていました。

  3. 世界経済への影響 リーマンとは異なり国際金融市場への影響は限定的の見通し
    今回の信用不安を受けて、海外市場では急速に懸念が拡がっています。しかし、中国の本土では、今回は不動産業界全体の問題ではなく中国恒大集団というアグレッシブな特別な体質の会社が招いた個別の流動性危機に過ぎないとみる見方が目立ちます。
    また、同社の債務についても規模の大きさが目立ちますが、既に銀行など金融システムへのエクスポージャーは絞られている上、多くが不動産業界のサプライヤーに対するものであることから、問題が生じたとしてもリーマン・ショックのように経済全体に打撃を与えるものにはならないとみられています。

  4. 中国政府の対応
    中国政府は、2020年8月に不動産業界に対して、財務改善を求めてきました。
    中国恒大集団の経営難は、中国の不動産業界の環境が再度引き締まる中で、高レバレッジ経営からの転換が間に合わず、資金繰りが悪化したことによると考えられます。
    市場では、同社の負債総額が約33兆円と巨額であるため、仮にその処理に失敗した場合、中国経済や金融システムに大きな打撃を与えるとの見方が拡がりました。

    習近平(シー・ジンピン)指導部は、企業の信用問題が金融機関に飛び火するリスクを回避したい考えです。金融システムに波及すると、不動産業界にとどまらず広い範囲でマネーの流れが凍り付く恐れがあるためです。
    中国共産党の経済政策の重要会議、中央財経委員会では2021年8月17日に「共同富裕(ともに豊かになる)」と並んで金融リスクの解消を議題としました。一定の債務不履行を認める一方で、現時点では銀行の連鎖破綻や預金の取り付け騒ぎは防ぐ方針です。
    構造改革などを進めるにあたり、金融不安は起こさないと示唆しています。
    中国政府は、個別企業の経営危機が金融不安につながる恐れがないかを十分見極めているようです。

  5. 市場の動き
    9月23日には人民元債と並んでドル債の利払い8353万ドル(約91億円)があります。恒大は22日時点で利払い実施の有無を明らかにしていないですが、30日間の猶予期間があるため9月23日にはデフォルトは確定しません。
    9月22日は、香港市場は休場日でした。独フランクフルト市場に上場する恒大株は22日、人民元債の利払い実施発表を受けて、2割超上昇する場面がありました。

    恒大の資金繰りは2022年以降が正念場であります。恒大は2022年に計6本、残高計76億ドル相当の社債償還期限を迎えます。
    ドル債の投資家は世界中で分散しており、リスクは限定的です。リフィニティブ(旧社名は、トムソン・ロイターで英国の大手金融情報会社)によりますと、9月23日に利払いのドル債で最も保有が多い米国のTCWアセットマネジメント(米国の資産運用会社)でも1.48%にとどまります。
    なお、日本では公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2021年3月末時点で株式と社債を合わせて約96億円保有しています。


<著者プロフィール>
乾 晴彦 氏
CFP、1級FP技能士、DCアドバイザー、宅建取引士(旧:宅建主任者)、証券外務員一種資格、終活カウンセラー、PB(プライベートバンキング)資格 昭和31年生まれ。
長年にわたり金融機関でコンサルティング業務を担当後、大手証券会社の人材開発室で、FP・生命保険の社内講師を務める。
現在は、銀行・証券・保険会社をはじめとする上場企業での社員向け営業研修講師、また、大学や大手資格予備校、FP教育機関でのFP研修講師として活動している。シニア層や富裕層向けの研修・相談業務には定評があり全国にファンも多い。

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