日税FPメルマガ通信 第342号

 

Ⅰ. IMFの世界経済見通し(2021年4月分)世界経済の成長率は2021年に6.0%を記録

Ⅱ. 米国の株式市場

  1. 7月23日の米株式市場で、ニューヨークダウ工業株30種平均株価は、続伸し終値で初めて3万5000ドル台を付けました。また、IT(情報技術)株の多いナスダック総合指数や米大型株全体の値動きを映すS&P500種株価指数も過去最高値を更新しました。
    その主な背景は、米企業収益の拡大期待が強まる中で、潤沢なマネーが金融市場に向かう構図が続いているためです。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で景気への懸念もあります。なお、7月19日には株価が急落しており不安定な値動きが続いています。
    (1)日経平均株価(最近の2年間)         (2)ニューヨークダウ(最近の2年間)
    米国企業の好決算が、市況の心理を明るくしています。例えば、7月22日の取引終了後に好決算を発表したツイッターの株価は、7月23日に3%も上昇しました。主要企業の利益が、市場の予想を上回る例が多くなり、今後決算発表を控えるアップルやマイクロソフトへの期待も高まっています。
    ただ、ニューヨークダウ株価は、現在2020年の年末からの上昇率が14%を超えており、高値警戒感も残ります。新型コロナウイルスのインド型(デルタ型)は米国でも感染が急増しており、景気の先行きには警戒もあります。
  2. 米国では7月19日のニューヨークの株式市場において、インドで確認された変異ウイルス「デルタ株」の感染が、アメリカを含め世界的に拡大することへの懸念から、ダウ平均株価は一時、940ドル余りも急落しました。
    その後、若干は買い戻されましたが、ニューヨークダウ株価の終値は、先週末に比べて725ドル81セント安い3万3962ドル4セントと、終値としては、2021年の最大の下落(2.09%のマイナス)になりました。
  3. 外国為替市場では、米国の先行きの不安から米国ドルを売って円を買う動きが強まりました。円相場は一時、1ドル=109円台前半まで値上がりしました。
    その背景には、「これまで景気の回復を期待して株を買っていた投資家が、一転してリスクを避け、安全とされる資産に資金を振り向ける姿勢を強めている」と考えられます。
    世界の金融市場が、デルタ株などの変異ウイルスの感染状況に神経をとがらせる展開が、当面は続くことも予想されます。
  4. ISM(全米供給管理協会(Institute for Supply Management)景況感指数は、製造業(約350社)が60(50が景気動向の良し悪しを測る分岐点)を上回って推移しております。つまり力強い景気回復を示唆しております。
    ただし、供給面での制約が成長を抑制している構図は変わらなく、受注に生産が追いつかず、入荷の遅れや仕入価格の上昇は、7月末の現時点でも極端なままであります。経済活動が正常化するに連れて、需要の顕著な上振れが収まる一方で、供給は増加してくると考えられますが、需要に比して供給が遅れがちなところは、引き続きリスク要因となると考えられます。
  5. 雇用関連では、非農業部門雇用者数は、2020年の3月と4月には、コロナで失った2,236万人の約7割を取り戻しました。しかし、コロナ前と比較すると、まだ676万人も少なく、完全雇用へは程遠いのが現状であります。
    一方で、企業の人手不足感は強く、求人数は急増しています。
    新型コロナウイルスの感染が、収束に向かうと就労を阻む要因が低減して、雇用増を促すと考えられます。
    また、バイデン米政権は、超党派議員グループとインフラ投資計画(8年間で1.2兆ドル・約130兆円)について合意しました。しかし、地球温暖化対策投資や法人税および富裕層向け増税が、盛り込まれなかったことから、民主党内の左派は、インフラ投資計画とは別に、税・歳出法案を成立させたい意向を示しています。
  6. 消費者物価指数が4月以降急上昇していて、6月に前年同月比4.5%に達しました。 新型コロナウイルスによる極端な下落から徐々に正常化に回復しつつあり、特に、航空運賃、宿泊費、並びに供給制約の強まりを要因とする中古車、レンタカーの価格が上昇しております。

Ⅲ. 日本の株式市場

  1. ワクチンの接種率 2021年7月21現在(1回以上)日本はまだ35%程度、ドイツとフランスは60%、米国は56%。
    まず、結論から申し上げますと先進国の中で遅れていた日本において、新型コロナウイルス変異株の感染拡大リスクに注意が必要ですが、ワクチンの接種進展が確認されること、日本政府及び日本銀行の財政・金融両面でのサポート姿勢(7月15日~16日の日程で開催された日銀金融政策決定会合現行の政策が維持されたことや景気見通しに修正がなかった)などを背景に日本国内の株価は、変動しながらも堅調に推移すると予想します。
    その後、2021年の10月から12月期にかけては、ワクチン接種進展などによる景気回復期待をある程度織り込んで日本の株式の株価が徐々に割高水準になることへの警戒感から短期的な株価の調整局面(横ばい期または下落期)が訪れると予想します。
  2. 東京都において、7月12日から8月22日まで4回目となる「緊急事態宣言」の発出を伴う新型コロナウイルスの感染再拡大で、実質GDPは2021年の前半は減少します。
    しかし、コロナ対応やワクチン接種開始の当初は、接種が進むも株価の回復はみられませんでした。しかし、今後はプラスが持続する見通しです。
    政府の追加の経済対策(衆議院議員の選挙前に政府が追加の経済対策を打ち出す方向)も見込まれ、景気下支え要因として期待できると思われます。東京オリンピック開催に伴う経済押し上げ効果は、大半の競技が無観客での開催のため限定的なものになるとみられます。なお、年内に予定されている衆議院議員選挙(任期満了は10月21日)は、政治的なリスク要因となる可能性があるでしょう。
  3. 最新の日銀短観では、大企業製造業の業況判断DIが、3月調査の5から14へ大幅に上昇し、2018年12月調査以来の水準に達しました。
    大企業非製造業も▲1から+1へ小幅ながらも上昇して、2020年3月調査以来のプラスになりました。今後の「先行き」は、製造業及び非製造業では、おおむね横ばいの見込みです。
    ワクチン接種の進展により、新型コロナウイルスの感染が抑制されれば、対個人向けサービスなど、非製造業の業況改善余地は大きいと考えられます。
  4. 雇用関連では失業率は、2021年4、5月の上昇で再び3%に達しました。新型コロナウイルスの感染再拡大が主たる要因と考えられます。
    一方で、労働需要の強まりが見られます。経済活動の再開につれて、失業率は再度低下に転じると見込まれます。


<著者プロフィール>
乾 晴彦 氏
CFP、1級FP技能士、DCアドバイザー、宅建主任者、証券外務員一種資格、終活カウンセラー、PB(プライベートバンキング)資格 昭和31年生まれ。
長年にわたり金融機関でコンサルティング業務を担当後、大手証券会社の人材開発室で、FP・生命保険の社内講師を務める。
現在は、銀行・証券・保険会社をはじめとする上場企業での社員向け営業研修講師、また、大学や大手資格予備校、FP教育機関でのFP研修講師として活動している。シニア層や富裕層向けの研修・相談業務には定評があり全国にファンも多い。

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