日税FPメルマガ通信 第339号

新たな上場スキーム「SPAC」を徹底解説する
2021年6月21日発行

 

SPAC(スパック)と呼ばれる株式用語が徐々に広まり、個人投資家のあいだでも注目度が増しています。いわゆる新規上場(IPO)の手法のひとつであるSPACですが、これまでの既存の株式公開とは大きく異なる点が数多くあります。

新しい投資先を探している投資家の方や、最新のトレンドを抑えておきたい方のために、新たな上場スキームであるSPACについて解説します。


1.からっぽな会社が上場するSPAC

SPACとは、日本語で「特別買収目的会社」と呼ばれている企業の形態のことで、株式公開IPOを前提として組織されています。ただし、一般的な事業会社とは異なり、特別買収目的会社であるSPACには具体的な事業は無く、その名の通り「買収」をすることが目的となっています。

つまり、SPACは将来的には何かしらの企業や事業を買収することだけは決まっているものの、その買収先さえも未決定あるいは未公開の状態の会社です。何もしておらず、何かを買収するとは言うものの買収先が不明で、まさに「からっぽ」な会社であるSPACですが、アメリカでは次々と上場して投資家からの資金を集めています。資金調達のスキームでは圧倒的な強みを持つソフトバンクグループも既に、米国企業に負けじとSPACによる株式公開を行いました。


2.買収されることで上場が実現

SPACの株式を求める個人投資家たちにとっては、中身の見えない福袋状態となりますが、そこには一般的な株式とは異なる魅力があることも容易に想像がつきます。思いもよらぬ買収が実現することで、投資額が数倍になるという期待値があります。

一方、SPACが続々と上場することによって個人投資家だけではなく、スタートアップやベンチャー企業にとっても大きなチャンスが生まれています。オフィス事業を手掛ける世界企業のウィーワークが、上場を目前に控えた時期にさまざまな問題がニュースなどで報じられたことで、株式公開を見送る事態となりました。

上場することを前提として事業を急速に拡大させるスタートアップやベンチャー企業にとって、不確定要素の多い株式公開IPOは大きなリスクを伴うものであることを再認識させられる出来事でした。

しかし、SPACによって買収される場合には、状況は一変します。

既にIPOを済ませて上場しているSPACがスタートアップを買収したとすると、この段階でこのスタートアップは実質的に上場を果たしたことになります。IPOに関わる諸手続きや、上場を目前に控えた時期のトラブル、報道機関や投資家による厳しいチェックなどの問題を全て回避して、上場というゴールに辿り着きます。


3.投資には厳しい目利きが必要

現在のような世界的な過度の金余り状態においては、SPACのような不透明な投資先にも多くの資金が集まりやすいです。このため、SPACの成功事例が生まれやすく、これまで上場が難しいとされてきたスタートアップにとっては、ひと筋の光が差すような状況となっています。

SPACを主催して買収資金を集める企業にとっても、自由度が高い大きな資金を集めることができますので、ほとんどデメリットが見当たらないスキームです。こうした状況を俯瞰的に見たとき、やはり最も大きなリスクをとっているのはSPACの株式を購入する投資家であることは間違いありません。

新たな上場の方法として注目されるSPACですが、ご自身が投資される際にはSPACの運用会社や担当者などの情報を精査する厳しい目利きが必要です。



<著者プロフィール>

福田 猛

ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役

大手証券会社を経て、2012年に金融機関から独立した立場で資産運用のアドバイスを行うIFA法人ファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。資産形成・資産運用アドバイザーとして現役活躍中。 2015年楽天証券IFAサミットにて独立系アドバイザーとして総合1位を受賞。 東京・横浜を中心に全国各地でセミナー講師としても活躍し、大好評の「投資信託選びの新常識セミナー」は開催数240回を超え、延べ8,000人以上が参加。新聞・経済誌等メディアでも注目を集める。著書に『投資信託 失敗の教訓』(プレジデント社)等がある。

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参考

経済金融情報メディア「F-Style」:https://fstandard.co.jp/column/

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