日税FPメルマガ通信 第335号

0から学ぶ 海外資産を日本に戻す際の注意点とは
2021年3月19日発行

 

コロナウィルスの感染拡大によってグローバル社会が収縮に向かうなか、これまで海外での貯蓄や運用を行っていた資産を日本へと戻す必要性に迫られる方が増えています。

日本国内での資金移動とは異なり、国際間の資産の移動にはさまざまな制約があることから、いざ自身の資産を動かそうとしても思うようにいかないケースも珍しくありません。さらに、税制的なメリットを享受するために海外での運用を行っていた方については、国際送金によって過去の収益に対する多額の税金が課されてしまうこともあります。

 

海外資産を日本に戻す際に注意するべき点について解説します。

 

1.資金移動によるコストを計算する

日本国内であっても銀行間の送金やATMからの引き出しなど、ご自身のお金を動かすことによって銀行に支払う手数料が数多くあります。これが国際送金となると、さらに多額の手数料が発生しますので注意が必要です。

海外から日本の銀行へと送金を行う場合には、まず海外銀行の国際送金の手配のための送金手数料が発生します。日本の銀行では1件あたり3000円程度が徴収されますが、海外の銀行の中には高額な送金手数料を請求する銀行もあります。また、海外のA国から日本へと送金する際に、経由国としてB国の銀行を介して送金が行われる場合には、仲介銀行手数料が発生します。B国の銀行のような仲介の役割をする銀行は一般的にコルレス銀行と呼ばれており、仲介手数料のことをコルレス手数料と呼ぶこともあります。さらに、国際送金ではA国と日本の通貨が異なるため、両替にかかる手数料が発生したり、そもそも両替手数料が良くないケースもあります。

なお、A国で日本円口座を持っているケースや、日本で外貨口座があるケースでは両替にかかる手数料はありませんが、その代わりにリフティングチャージという同一通貨の送金にかかる手数料が発生します。

 

2.税務当局の監視状況を把握する

日本の国税庁や税務署では、海外に資産を持つことについて決して良い感情を持っていないようです。日本の金融機関とは異なり十分に個人の資産状況を監視することができず、税金逃れのための所得隠しが行なわれている可能性について懸念しています。海外から日本への資産の移動は、税務当局にとっては非常に重要な海外資産の監視場所です。これまで海外にあるために把握できていなかった資産が、日本国内へと持ち込まれるタイミングを監視することで、様々な疑わしい経済活動を取り締まろうとしています。

このため、特に一度に100万円を超える送金については、必ず日本の税務当局が知るところとなります。また、税務当局からの監視を逃れようと資産を小分けにして移動させようとする試みについても、やはり日本国内では一般的に海外よりも監視体制が強力ですので、あまり意味がありません。

海外資産を日本へと移動させる場合には、その資産がどのような源泉によって発生したもので、現地の税制においてどのような納税を行っていたのかを正確に把握した上で移動させるようにすることを心掛けてください。

 

3.コスト削減や監視逃れのやりすぎに注意

海外資産の送金のためのコストを削減したり、税務当局からの監視を逃れることを目的として、現金をハンドキャリーで運ぶような試みをされる方もいます。しかし、海外からの現金の持ち込みについても届け出が必要です。また、それぞれの国で事情が異なりますが、現金の国外への持ち出しを厳しく取り締まっている国もあります。申告や届け出、納税など国ごとに異なる要件が設定されていますので、現金で資産を持ち出す際には必ず現地の法律についても確認するようにしてください。

海外からの資産の移動では、コスト面では惜しい思いをするものの、やはり銀行送金をメインとしていただき、税務当局からの問い合わせにも即座に対応できるようにしておくことが大切です。

国際間の資金移動を手伝う業者も数多く存在しますが、国際テロ組織との関与などの思わぬ疑いを持たれる最悪のケースも想定されますので、ご注意ください。

 

 


 

<著者プロフィール>

福田 猛

ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役

大手証券会社を経て、2012年に金融機関から独立した立場で資産運用のアドバイスを行うIFA法人ファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。資産形成・資産運用アドバイザーとして現役活躍中。 2015年楽天証券IFAサミットにて独立系アドバイザーとして総合1位を受賞。 東京・横浜を中心に全国各地でセミナー講師としても活躍し、大好評の「投資信託選びの新常識セミナー」は開催数240回を超え、延べ8,000人以上が参加。新聞・経済誌等メディアでも注目を集める。著書に『投資信託 失敗の教訓』(プレジデント社)等がある。

 

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参考

経済金融情報メディア「F-Style」:https://fstandard.co.jp/column/

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