世界中がコロナウィルスの感染拡大への対策に明け暮れた2020年ですが、投資の世界においては、これまで緩慢な動きだった金相場が急上昇しました。
アベノミクスによる株式市場の好調さの影に隠れてしまっていた金が、1オンスあたり2000ドルを超えるという歴史的な1年となりました。インゴットの保有や、金積み立てなど様々な形で金への投資をされてきた方にとっては、大きな収益への喜びと共に、税金のことが不安になってくると思います。
金投資による利益への課税ポイントについて、まとめてご紹介します。
金への投資のリターンに対する所得税の大原則は、売却して収益を確定するまでは課税されないということです。税法において商品に分類される金は、いわば家電製品や家具類などと同じですので、保有していることによって発生する税金はないです。
土地や建物のように固定資産税が生じることもありませんし、自動車などのように年次の税金が課されたり、メンテナンスコストもかかりません。もちろん、金の保管のために業者などを利用されている方に対しては、管理費などの名目で年次のコストが発生することはありますが、保有に対する税金はありません。
つまり、金への投資で税金が課されるのは、売買のタイミングのみです。
2019年10月、消費税が8%から10%へと引き上げられました。ちょうど金の価格が上昇した期間中の消費増税であるため、8%の時期に購入された金を、10%になってから売却されたという方もいらっしゃることでしょう。
金の売買にあたっては、売買のどちらのタイミングにおいても消費税が発生しています。このため、インゴットや積み立てなどで金を購入されたときには消費税を支払っており、逆に売却されるときには消費税を受け取っています。
手元に金を持たずに、業者への発注によって金現物を預けたままにしている方は、購入と売却のそれぞれで消費税についても自動的に計算が済まされています。購入時と売却時の消費税が同じであれば同じ税額が発生しますので相殺となりますが、増税をはさんだ売買である場合には、売却時の方が消費税は高くなります。
サラリーマンや事業主の方が、個人的に金への投資をされている場合には、金の売買による収益は譲渡所得として分類されます。ただし、売買の頻度やボリュームが大きく本業と見なされる場合には、事業所得や雑所得となるケースもありますので、この判断につきましては税理士にご相談ください。
金投資における課税のポイントとしては、保有期間「5年」を超えているかどうかが最も重要となります。金の売買には特別控除として50万円の枠が設けられており、50万円以下の収益に対しては課税が行われませんので、それ以上の金額が課税対象となります。
さらに、50万円を超える金額についても、もし5年以上の保有がされている場合には、2分の1へと減額してから税金の計算を行います。5年に満たない場合には、この2分の1の減額が適用されませんので、税負担は大きなものとなります。
2020年の金価格上昇を受けて利益を出された方にとって重要な項目をまとめてご紹介しました。
さらなる上昇を期待して保有し続けている方には一切の税金がかかりませんが、2020年に利確された方には、売却のタイミングで譲渡所得や事業所得、雑所得などの名目で所得税や住民税の課税があります。5年を超える保有があったかどうかによって税額には大きな違いがありますので、できるだけ古いものから順番に売却するように処理するのが良いかと思います。
また、消費税の増税タイミングであるため、売却金額には10%の消費税が上乗せされていることも忘れないようにしてください。
<著者プロフィール>
福田 猛
ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役
大手証券会社を経て、2012年に金融機関から独立した立場で資産運用のアドバイスを行うIFA法人ファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。資産形成・資産運用アドバイザーとして現役活躍中。 2015年楽天証券IFAサミットにて独立系アドバイザーとして総合1位を受賞。 東京・横浜を中心に全国各地でセミナー講師としても活躍し、大好評の「投資信託選びの新常識セミナー」は開催数240回を超え、延べ8,000人以上が参加。新聞・経済誌等メディアでも注目を集める。著書に『投資信託 失敗の教訓』(プレジデント社)等がある。
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経済金融情報メディア「F-Style」:https://fstandard.co.jp/column/
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