信託銀行に対して、一般的な銀行業務を行う銀行のことを商業銀行と呼びます。
信託銀行と商業銀行の違いは、名前にもある「信託」という行為にあります。
「信託」とは、自分の資産を信頼できる人に託し、将来的にその資産を大切な人に引き渡すために管理することです。
制度としての「信託」の始まりは、中世イギリスで誕生したユースといわれる制度だと言われています。ユースは、自分もしくは他者のために信頼できる人に財産を譲渡する制度でした。当時のイギリスでは、教会への寄進や戦争に行った兵士が家族の生活を守ることを目的として利用されたといわれています。
明治後半には日本にも信託の概念が導入され、1922年に「信託法」と「信託業法」が制定されました。戦後は、信託銀行が取り扱った貸付信託が基幹産業への資金供給源となるなど日本経済を支えてきた歴史があります。
資産を預けて管理を任せたい預金者は「委託者」と呼ばれ、資産を運用し管理を任される信託銀行は「受託者」と呼ばれます。また、資産を受け取る家族や後継者を「受益者」と言います。
信託銀行では、委託者から預かった資産を増やしたり、守ったりして、受益者に引き渡すまでお付き合いをします。資産の内容としては、株式・土地・建物など財産的価値のあるものが対象になり、商業銀行に比べて幅広い内容になります。
信託銀行は、商業銀行同様に銀行業務として融資・為替・預金の取り扱いがあります。商業銀行が融資に力を入れるのに対して、信託銀行は資産運用にも力をいれており、プライベートバンキングに近い存在です。
上記でも説明しましたが、商業銀行では取扱うことのできない、金銭・有価証券・不動産の信託といった「信託業務」ができることが一番の違いです。信託業務に留まらず、不動産仲介・遺言作成・相続財産目録の作成や遺産分割手続きなどの遺産整理業務などの「併営業務」も行います。
また、個人向けのサービスだけではなく、信託銀行では法人向けのサービスもしており、上場企業の株主管理を行う証券代行業務も信託銀行が担っています。他にも、投資信託において、各ファンドが保有する資産を管理・保管したりするのも信託銀行の役割です。
信託銀行で取り扱いできる資産は、近年の法改正により徐々に拡大しており、著作権などの「知的財産権」や温室効果ガスの排出枠のやりとりを行う「排出権」など新しい信託も生まれています。
信託銀行は、資産を管理してもらうための銀行なので、ある程度資産がある方が対象となり、経営者や資産家の利用が目立ちます。
しかし、サラリーマンでも退職金などを預けたい場合は信託銀行を利用しますし、住宅ローンの借入などもできます。。
商業銀行では不動産を運用することができませんが、信託銀行では不動産の管理もできるので、金銭だけではなく他の資産とまとめて管理を任せられることがメリットになります。
また、遺言・遺産相続についても安心して任せられます。信託銀行では、遺言の作成から執行、遺産調査から相続まで担ってくれて、必要に応じて税理士や弁護士の紹介依頼もしてくれます。
信託銀行とはどんな銀行か理解できましたでしょうか?
まとまった資産がある場合は、商業銀行に預けるより資産運用を得意とする信託銀行の方が預け先として安心できると言えるでしょう。
資産を運用するだけではなく、遺言などを通して受益者に資産を移すところまで相談できるからです。
また、信託銀行では商業銀行同様のサービスもしており、資産がない若年層でも住宅ローンの相談もできます。他にも、退職金を定期にすると、商業銀行より高い利息になるプランが用意されることもあるようです。
想像しているよりも、敷居が低いと思うので、資産運用について相談したい方は足を運んでみてはいかがでしょうか。
<著者プロフィール>
福田 猛
ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役
大手証券会社入社後、10年間、1,000人以上の資産運用コンサルティングを経験。2012年IFA法人であるファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。独立系資産運用アドバイザーとして数多くのセミナーを主催し、幅広い年齢層の顧客から支持を受け活躍中。
著書に「金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託」(幻冬舎)がある。
2015年楽天証券IFAサミットにて独立系ファイナンシャルアドバイザーで総合1位を受賞。
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