日税FPメルマガ通信 第338号

 

Ⅰ. 世界の経済の概要

1.IMF(国際通貨基金:International Monetary Fund)からの世界経済の見通し
  3ヶ月毎(1月、4月、7月、10月)に経済成長率を発表

国際通貨基金(IMF)は、2021年4月6日に改定した世界経済見通しで、2021年の成長率見通しを6.0%とし、前回2021年1月の予測から0.5ポイント引き上げました。

2021年に、もしも世界全体で上記の6%の経済成長が実現した場合には、現行のIMF統計で遡れる1980年以降で最高となります。また、世界銀行の同様の統計でも1973年以来の高い伸びとなります。

2.上記の世界の経済見通しのポイント

  1. 新型コロナウイルス禍で、2020年は世界全体でマイナス3.3%成長に落ち込みました。その後ワクチン普及や米国・日本・ドイツなどの先進国での積極的な財政出動と超低金利政策の継続が要因で世界経済を押し上げています。コロナ禍前の3%台半ば(2015~2019年の単純平均)と比べて、伸び率が拡大する見通しであります。
  2. 特に、世界第1位の経済大国である米国が、2021年の成長率は6.4%と前回の1月の見通しよりも1.3ポイント上方修正しました。その背景は、今年1月に発足したバイデン政権が1.9兆ドル(約200兆円)の経済対策を実現した効果を加味しました。また、世界第2位の経済大国の中国(8.4%の上昇)とともに世界経済をけん引すると指摘しております。
  3. コロナ禍の前には、IMFは2020年の世界経済の成長率を3%台と予測していました。それが、逆にマイナス3.3%に落ち込みました。 一方で、世界経済が一時的に過熱する恐れが高まっています。市場の関心は、米国の金融政策の動向に移っています。米連邦準備理事会(FRB)は、2021年の成長率がIMF予測とほぼ同じ6.5%になるとの見通しをまとめつつ、少なくとも2023年末まではゼロ金利を維持する方針を示しています。
    FRBは一時的な物価上昇を容認する構えで臨んでおります。景気の過熱をうまく制御できなければインフレを招きます。その後には、利上げを迫られ、新興国から先進国への資金流出など経済の混乱リスクもあります。
  4. その他に、政策主導の需要回復に供給が追いつかないリスクもあります。世界的な半導体の不足(特に、コロナで自動車産業が半導体の購入を大幅削減していました。半導体の生産再開には、数ケ月以上かかります)に、自動車産業は減産を迫られ、米中の対立も深刻であります。供給の目詰まりから生産の停滞が長引くことで立ち直りつつある雇用情勢に再び悪影響がおよぶ恐れもあります。
    IMFは世界経済の成長率は中期的には鈍ると予測しましたが、コロナ禍は完全に終息したわけではなく、先行きの不確実性はなお色濃い見通しであります。

3.2020年の主な先進国の株式市場の騰落率

  • 日本:日経平均株価:16.0%、
  • 米国:NYダウ:7.2%、ナスダック:43.6%
  • 欧州:イギリス:▲14.3%、ドイツ:3.5%

4.株価などのチャート 2021年5月14日現在

(1)日経平均株価(2年間)            (2)米国・NYダウ(2年間)


  1. コロナ後の株価の動き:実体経済と株価は乖離しています
    2021年2月15日には株価が3万円台の大台に乗りました。2020年の株価は、
    • 2万3,000円台でスタート、新型コロナウイルスの感染拡大を受け3月に1万6,000円台まで急落しました。
    • しかし、各国の大規模な金融緩和や財政出動が相場を押し上げました。その後は米バイデン大統領の政策や、開発中のコロナワクチンの有効性への期待から、年末にかけて株高が加速しました。
  2. 2020年11月に入って株価は29年ぶりの高値を更新
    ⇒ 新型コロナウイルスのワクチン開発が進み、経済活動再開が期待され、また、トランプ前米大統領がバイデン新大統領への政権移行業務をようやく認めたことも好感されました。

Ⅱ. 米国の経済

1.米国の重要な経済指標と経済の規模

  1. 米国の小売売上高 米商務省センサス局が、毎月対象月の翌月第2週ごろに発表
    米国内で販売されている小売業・サービス業の売上高を集計したものです。米国では個人消費がGDPの約7割を占めており他の先進国より高い傾向にあります。
    • 米商務省が2021年2月17日発表した1月の米小売売上高(季節調整済み)は前月比5.3%増と急回復しました。
    • 伸び率は2020年6月以来の大きさで、市場予想(1.2%増)を大きく上回りました。金額では5682億ドル(約60兆円)と、月間の過去最高を記録しました。
      ⇒ 背景:政府の現金給付や株高を追い風に消費意欲が高まったためです。
    • 米国政府の経済対策で、2021年1月に国民1人あたり600ドルの現金が給付され、米家計の1カ月の所得の約1割にあたる金額で消費意欲を後押ししました。
  2. 米国のS&P/ケース・シラー20都市圏住宅価格指数
    • 2019年ウェルズリー・カレッジのカール・ケース教授とノーベル経済学賞を受賞されたエール大学のロバート・シラー教授が中心となって開発した、全米主要都市の一戸建て住宅の価格動向を示す指数です。「リピート・セールス」という再販価格を基に算出されます。
    • 毎月全米の10大都市圏、20大都市圏について公表され、四半期ごとに米国全土を調査対象としております。
  3. 米国の株式などの規模
    • ① 株式市場の時価総額の割合:世界の約4割  2021年3月末現在
          
    • ② 米国のGDPの割合:世界の約1/4   2020年末現在
      なお、小売売上高では、米国は2021年の年末のクリスマスセール、中国は2021年11月11日の「独身の日」のセールがポイントです。

2.為替 シーソーであります

  • 需要(買いたい量)と供給(売りたい量)
  • 変動要因 信用(貿易も含めた経済面)・政治・有事など
      

Ⅲ. 2021年の日本経済の見通し <政府からのコメントです>

1.政府発表2020年12月22日内閣府発表の「月例経済報告」「わが国経済の基調判断」の要約であります。

2021年度については、経済財政運営としては、国民の命と暮らしを守るため、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図るとされています。
総合経済対策の円滑かつ着実な実施により、公的支出による経済の下支えを図りつつ、設備投資をはじめとする民間需要を呼び込みながら、生産性を高め、賃金の経済的な上昇を期待しています。
2021年度の実質GDP成長率は4.0%程度、名目GDP成長率は4.4%程度と見込まれ、年度中には経済の水準がコロナ前の水準に回帰することが見込まれます。

2.ポイント

    


<著者プロフィール>
乾 晴彦 氏
CFP、1級FP技能士、DCアドバイザー、宅建主任者、証券外務員一種資格、終活カウンセラー、PB(プライベートバンキング)資格 昭和31年生まれ。
長年にわたり金融機関でコンサルティング業務を担当後、大手証券会社の人材開発室で、FP・生命保険の社内講師を務める。
現在は、銀行・証券・保険会社をはじめとする上場企業での社員向け営業研修講師、また、大学や大手資格予備校、FP教育機関でのFP研修講師として活動している。シニア層や富裕層向けの研修・相談業務には定評があり全国にファンも多い。

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