日税FPメルマガ通信 第310号

  

<新たな老後資産形成のトレンドに!?「個人型M&A」を徹底解説> 

2019年3月15日発行

 

 M&Aとは、対価を支払って企業を買収することです。もともと法人が事業を拡大する時間と手間をお金で買うために用いられている手法ですが、最近では後継者がいないオーナーの事業承継対策や個人の資産形成手段としても多く用いられるようになっています。

  本コンテンツでは、老後資産形成のための個人型M&Aにフォーカスし、その概要やメリット、注意点についてご紹介します。

■1.老後資産形成としての個人型M&Aとは?

 資産形成手段として行われている個人型M&Aは、手元のお金でM&A先の株式を買い取り、株主として配当などのインカムゲインを受け取り、良い条件の譲渡先が現れたら売却してキャピタルゲインを得ることを目的とするものです。

 株主価値の最大化のために、場合によっては経営に参画することも有り得ます。そのためには株主として多くの発言権を握ることが必要であるため、会社の全株式を買い取ることが一般的です。したがって、個人が買い取る会社の規模は企業価値が数百万円から数千万円程度の中小企業であることが多いようです。

 経営環境変化のスピードが速く、会社が存続するために経営者として求められる資質がますます高くなっている昨今、創業者やオーナーの高齢化に伴って後継者不足に直面している中小企業は多いものです。

 また、同時に従業員の生活を考慮し自身の代で会社を畳みたくないと考えているオーナーも多く、そのようなオーナーとのニーズがマッチすれば、交渉次第で実際の企業価値よりも安く買収するできることもあります。また、新たなオーナーとしてこれまでの社会人経験で得たノウハウや人脈を買収先の中小企業とコラボレーションさせることにより大きなシナジー効果が発揮され、結果として企業価値が向上し高値で売却することも期待できます。 

■2.個人型M&Aの注意点

 言うまでもなく、投資の基本は「卵はひとつのカゴに盛るな」です。

 しかし、個人型M&Aの場合はどうしても全資産のうち多くの割合の資金を買収に振り向けざるを得ない傾向があります。ややもすると、会社を「一点買い」することと同じになってしまいますので分散投資効果が得られず、資産ポートフォリオ上のリスクが非常に高くなってしまいます。これに加えて基本的に非上場株式を買うわけですから、上場株式と比べて売却したいときに売却できない流動性リスクも非常に高いのです。

 また、証券会社経由で手軽に上場株を買うつもりで買収先の財務諸表や事業報告書などしか読まないようでは、会社が抱える各種のリスクを見抜けずに高値掴みや後日の倒産など失敗する可能性が高くなります。

 そもそも個人型M&Aの対象になるような中小企業の開示書類は、上場企業が開示している有価証券報告書と異なり極めて簡便です。また、M&Aの基本は従業員のモチベーション・生産設備など資産の状況・取引先との関係・業界における地位・提供する商品やサービスの強み・事業の将来性など、目に見えにくいものまで徹底的にデュー・デリジェンス(価値の調査と査定)することなのです。

 このような調査・査定はM&Aブローカーによって提供する内容や質が大きく違うこと、外部の専門家に依頼すると決して安くないコストが発生すること、そもそも買収先の企業が詳細を開示しなければ買収実行前に知ることは不可能である点に、注意が必要です。

 さらに、株主の地位に加えて経営者として会社に参画している中で会社が倒産した場合は、買収した会社の価値がゼロになるだけではなく債権者との契約内容次第で会社と関係の無い私財まで失うことにもなります。 

■3.まとめ

 結論として、老後資産形成としての個人型M&Aは非常にリスクが高い投資手法といわざるを得ません。
 専門家の意見を聞き入れながら、慎重に買収を探すことを強くお勧めします。 

 

<著者プロフィール>

福田 猛

ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役

大手証券会社入社後、10年間、1,000人以上の資産運用コンサルティングを経験。2012年IFA法人であるファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。独立系資産運用アドバイザーとして数多くのセミナーを主催し、幅広い年齢層の顧客から支持を受け活躍中。

著書に「金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託」(幻冬舎)がある。

2015年楽天証券IFAサミットにて独立系ファイナンシャルアドバイザーで総合1位を受賞。

 

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参考

経済金融情報メディア「F-Style」:https://fstandard.co.jp/column/

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