日税FPメルマガ通信 第303号

<長期投資こそESG投資!> 

平成30年11月26日発行

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 ESG投資について、検討したことはありますか?
 日本では規模の面などで存在感の薄い投資手法ですが、欧米先進国では広く知られた投資手法であり、特に年金基金など巨額の長期資金を運用する機関投資家を中心にESG投資への取り組みは急速に拡大しています。
 この流れを受け、今後は日本でもESG投資は大きく拡大していくものと考えられています。
 本コンテンツでは、ESG投資の概略と日本における可能性の大きさについて、ご説明します。

■1.ESG投資とは

 ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の略です。そして ESG投資とは、企業を環境や社会との関わり、および企業統治のリスクを考慮しながらスクリーニングし、その取り組みに優れた企業に投資する手法です。

 多くの投資家は、株式投資で銘柄を検討する際に売上や利益、ROAやROEなど、伝統的な財務指標による評価を重視します。
 これに対して、ESG投資は環境・社会・企業統治といった非財務面について評価し、投資先銘柄を選別する手法です。財務分析による投資が企業活動の結果を評価する手法であれば、ESG投資は企業活動そのものを評価する手法と言えるでしょう。

 なお、ESG投資と比較・混同されやすい投資手法として、SRI(社会的責任投資:Socially Responsible Investment)というものがあります。
 ともに非財務情報を大いに評価する点では共通しているのですが、SRIが軍事産業やタバコ産業などの企業を倫理上の観点から投資先候補から除外するという基準であることに対して、ESG投資は長期的なリターンを追求するために環境・社会・企業統治に優れた投資先を発掘するための手法です。

 このように、ESG投資はSRIよりも投資候補先を多角的にスクリーニングする手法なのです。

 

■2.ESG投資に着目すべき理由

①GPIFがESG投資に参入
2017年3月、日本の公的年金を運用する世界最大級の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG投資による日本株式の運用を開始しました。これは3つのESG指数に連動したパッシブ運用であり、現時点で既に1兆円を超える金額を投資しています。そして、今後はアクティブ運用や債券運用でもESG投資をさらに拡大させていく方針です。GPIFは世界有数の運用資産額を保有していることと同時に、国民の年金資産を運用するというその公的な性格から、100年後を見据えて運用を行う超長期投資家です。このような巨大かつ長期運用を行う投資家の動きには、留意する必要がありそうです。

②長期投資に最適な投資手法
株式投資で重要なポイントは、短期目線ではなく長期投資により投資先の長期的な成長機会を捉えることにあります。
ESG投資は、持続可能な投資(SI: Sustainability Investment)とも呼ばれています。

これは、ESGを考慮する企業は長期的・持続的に企業価値を最大化し、投資家に長期的な投資リターンをもたらすとの考え方に基づいています。実際にESG評価が高い企業はROEが高いうえに株価の変動幅が低く、さらに市況暴落時の株価下方リスクも限定的であることが欧米での研究で実証されています。

このような特性を考慮すると、GPIFのような巨額かつ公的な資金を長期間にわたって運用する機関投資家がESG投資に着目することは自然と考えられます。

③企業もESGに着目
GPIFがESG投資を開始したことは、日本の上場企業に少なからぬ影響を与えています。
また、2015年に導入された企業価値の長期的な持続的成長を促進するための企業統治方法の策定やその実践等についての公表を義務付ける「コーポレート・ガバナンスコード」や、適格機関投資家に対して投資先との対話を通じ経営を監視することを要請する「スチュワードシップ・コード」は、上場企業にとってESGへの取り組みを向上させることと相通じるものがあります。
つまり、上場企業は「コーポレート・ガバナンスコード」や「スチュワードシップ・コード」との相乗効果により、機関投資家の理解を得るため自社のESG評価を高めることへのモチベーションが高まっているのです。

事実、このことは多くの企業において浸透しつつあり、「ESGへの前向きな取り組みと情報開示を通じた自社の企業価値向上」を経営課題に据える企業は増え続けています。
その結果、ESG評価を高めるための企業努力が企業価値向上につながり株価が上昇するという、投資家にとって好循環が期待できるのです。
つまり、ESGに消極的な企業への期待は相対的に低くなる傾向になると考えられます。

 

■3.ESG向上の観点から見た日本企業の課題

 欧米の機関投資家から、日本企業のESGへの取り組みはまだ不十分であるとの声を多く聞きます。
一例を挙げると、政府が提唱する「働き方改革」です。

 これについて多くの日本企業では、画一的な従業員の労働時間削減と女性登用のような形式的なものに留まっており、本来の目的である企業の生産性向上が達成されていないという評価が多いのです。また、依然として従業員の意識は、仕事に対する満足度と意欲が低いことから企業へ付加価値をもたらすことよりも帰属することのみの傾向が強く、新たな企業価値向上をもたらすモチベーションが生まれにくいとの研究結果が出ています。

 ESG投資は株主以外の利害関係者にも配慮することが基本概念ですから、企業は従業員が仕事に対する満足度と意欲を高めるように配慮すべきです。

 言い換えると、上記のような課題を解決することで日本企業の生産性は向上し、企業価値は高まります。つまり、ESG投資の観点から日本企業はまだ伸びる余地があるということです。

■まとめ

 
ESG投資は長期投資に適し、そして日本企業はESG投資先として有望であることはご理解いただけたと思います。ESG投資にフォーカスした金融商品は少ないながらも存在しますので、ご検討してみることをお勧めします。

 

<著者プロフィール>

福田 猛

ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役

大手証券会社入社後、10年間、1,000人以上の資産運用コンサルティングを経験。2012年IFA法人であるファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。独立系資産運用アドバイザーとして数多くのセミナーを主催し、幅広い年齢層の顧客から支持を受け活躍中。

著書に「金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託」(幻冬舎)がある。

2015年楽天証券IFAサミットにて独立系ファイナンシャルアドバイザーで総合1位を受賞。

 

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参考

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