日税FPメルマガ通信 第291号

<IFAは中立なのか。利用の際のメリット/デメリットを考える。>

平成30年5月25発行

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近年存在感を増してきているIFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)。
ネット上の情報も増えてきて、気になっている方も多いのではないでしょうか。IFAは個人投資家の頼りになる存在として注目されている一方、サービスを使う時にどの様な注意点やリスクがあるのでしょうか?今回は中立的な立場から見た、IFAを使う時のメリットとデメリットについて解説します。

■1.IFAを使うメリット

 ・長期資産管理が可能
従来の金融機関の対面形式の営業はその会社の方針に沿ったノルマがあり、それを優先させるケースが多くあります。ノルマをこなし自分のボーナスを増やすために、営業マンたちは高額の手数料の商品を勧めたり、頻繁な売買を勧めて成績を伸ばします。
また、既存の金融機関では転勤の人事制度があり、その営業マンは数年経てば別の場所に転勤というケースもあります。将来苦情を言う事態が発生したとしても、その時にはその担当者はいないかもしれないのです。その様な場合、顧客は担当者を信頼出来ず、長期の運用や世代を越える資産管理を任せることは難しいでしょう。

 IFAは証券会社などの金融機関から独立しているため、各運用会社や保険会社の商品を比較し、どれがその顧客に適しているかアドバイスします。各社の営業方針やノルマに縛られることがないので、金融機関に所属している営業マンと比べ、偏りがなく透明性の高いアドバイスが受けられやすい点が挙げられますし、長期的に相談に乗ってもらえるケースが多いでしょう。

・多方面からのアドバイス
IFAは投資だけでなく年金計画や社会保険、不動産投資のローン等の選択のアドバイザーとしても活躍します。彼らはFPや税理士などを兼務している事も多く、様々な角度から資産運用をアドバイスすることが可能です。
IFAは個別銘柄ごとに上昇下落や損得を論じるよりも、全体的に顧客のポートフォリオを整え、前述のようにあくまで資産全体の増加を長期的に計画して管理する傾向にあると言えるでしょう。

・経験が豊富なプロに任せられる
基本的に投資や資産運用は自己責任ですので、自分で勉強して知識を身に付け、少しずつ経験を積みながら投資をすることが最善の方法かもしれません。しかし自らの職業を持ちその分野に従事する忙しい個人投資家が、投資の知識と経験を積んでいくには長い時間と労力が必要です。

金融業界のプロとして働くIFAは、主に証券会社などで活躍してから独立した人など、一般的に業界の豊富な知識と経験がある人で構成されています。株式市場の動向や株価を分析する能力に長けた人や、資産配分の方法などに精通している人もおり、状況に応じて適切な対策を講じることができます。

また、ファイナンシャルプランナー(FP)のアドバイス業務に加え、IFAは資産運用の商品の受発注までサポートしてくれます。このように、個人投資家にとってIFAは財務全体のアドバイザー兼アドミニストレーターといえるでしょう。これがアメリカでは「人生で成功するためには医師・弁護士・IFAの3人のプロを味方につけることが重要」といわれる所以です。
***
上記のメリットを見る限り、IFAを使わない手はないと思われるでしょう。
しかし、IFAもタダではありません。IFAを使う時の注意点やリスクを以下で見ていきましょう。

■2.IFAを使うデメリット

 ・手数料が高い
日本の場合、IFAは手数料ビジネスです。顧客から直接報酬をもらう方法は取らず、個人投資家との間で金融商品を売買した際の手数料の一部を、証券会社から受け取る仕組みになっています。
つまり、IFAの報酬の原資は、個人投資家が支払う手数料です。IFAのアドバイスやコンサルティング料が入っている分、当然IFAを通して購入した商品はネット証券口座等で直接購入するよりも手数料が高い傾向があります。「プロに任せられる」の項目でご説明したとおり、IFAはライフプランナーと違って資産運用の面で商品の受発注等の実務も請け負う為、その分の手数料も含まれています。

具体的に投資信託を例に説明します。投資信託の手数料は主に2つあります。1つは購入時にかかる販売手数料。もう一つは保有している間ずっとかかる信託報酬です。
前者の販売手数料はネット証券口座等で投資家が購入する場合は0%のものが多いですが、IFAを通して購入すると0~3%(消費税別)かかるケースが多いです。後者の信託報酬は、同じ投資信託ならネット証券口座で購入しても、IFAを通しても同じです。(その他、個人投資家が負担する分は、投資信託を換金するときにかかる信託財産留保額「0〜0.5%」があります。この信託財産留保額も同じ投資信託であれば購入チャネルが変わっても投資家の負担は同じです)

また手数料報酬をすでに受け取っているはずのIFAが、契約後の「アドバイス料金」や「顧問料金」を請求するケースもあると聞きます。信託報酬はそれら顧問料金を含めた報酬であるはずなのですが、契約によっては要求されるかも知れませんので注意が必要です。

ちなみにIFA発祥の地イギリスでは、2013年にIFAが金融機関から手数料を受け取ることを禁止しました。以降IFAはアドバイスに関する報酬を受け取ることのみが許可されています。これは、「IFAが取引額や頻度によって増大する報酬に依存していることは、中立的でなく不適切」と指摘を受けたためです。イギリスだけでなくオランダやオーストラリアもこれに続いてIFAの手数料の受け取りを全面禁止しています。

・組織力が無い
IFAが独立している状態にある、ということは裏を返せば組織力が無いことを意味します。組織力とはこの場合、会社や団体として多くの媒体にアクセスがある情報収集力や、顧客への商品やサービスの品質標準にあります。IFAは独立しているため、人によって知識やコンサルティングの差が出たり、運用の方針がぶれたりする可能性があります。

・最後は自己責任
IFAになる人たちは、前述の通り税理士や会計士、独立系FPなど様々ですが、なるために必要な資格は外務員資格のみです。外務員資格は一種と二種に分かれており、二種は銀行内定者や新入行員も含め受験者の5割以上が合格できる試験です。
ですから極端を言えば、この資格を持った勤務3年目の銀行員はIFAとしても独立して働けることになります。その様なIFAに、ご自身の大事な財産を任せられるかどうかは、自身の判断によります。例えば手術など人生で重要な決断をする時は、複数の病院で診察を受けたり、様々な専門家の意見を聞いたり自分で調べたりしますよね。

あくまでもIFAはアドバイザーであり、アドバイスに沿って出した決断は、自己に任せられます。また、資格がないのにIFAを名乗る詐欺の場合もあるようですので、注意が必要です。もちろん詐欺で無い大半の優秀なIFAは、顧客の資産運用が順調に進み利益を生むことを望んでいます。それは彼らにも報酬が入るので当然のことといえます。

■3.何を基準にIFAを選択すればいいのか?

ではIFAならどこを利用しても同じなのでしょうか。実はIFA事業者にも様々な違いがあります。自分の求めるニーズを明確にして事業者選択を行うことが重要になります。
例えば以下のような点がIFA事業者によって違ってきます。

①リターン追求の提案か、リスク管理型の提案か。
これまでの日本の金融機関の資産運用といえば「この商品は儲かります」という提案が主流です。いわばリターンの最大化を目的とする提案になります。それに対してリスク管理型の提案とは、長期的に年率○%のリターンを目標とするときに一番リスクの少ない投資商品の組み合わせを提案するタイプの手法です。
リターン追求の提案は総じて短期投資、リスク管理型の提案は長期投資になるケースが多いでしょう。

②保険業界出身のFPと証券会社出身のFP
日本ではIFAよりもFP(ファイナンシャルプランナー)の方がなじみがあるのではないでしょうか。FPは月々の収支バランスの確認や、将来のキャッシュフロー表を作成し、将来に必要な運用計画をアドバイスする業務です。日本ではFPのほとんどが保険業界出身といわれます。
それに対して近年IFAとして独立する中には証券会社出身のアドバイザーが多くなっています。保険業界出身のFPよりもマーケット関連の動向には詳しいケースが多いと言えます。保険業界出身のFPの中には一般的な資産配分を提案するのみで、具体的な商品の提案や発注まではしないケースも多いため、物足りなく感じる投資家もいることでしょう。
提案を受けるIFAのこれまでの経歴から得意分野をヒアリングすることも重要なことでしょう。

③フルコミッション制(個人中心の活動)か、組織力重視の提案型か(カンファレンス)
現在日本のIFAの中にはいろいろな報酬形態が存在します。中でも提案に影響を与えるのはフルコミッション制です。フルコミッション制は顧客から売買の際にいただいた手数料が、決まった割合でIFAの報酬に直結する形態です。
フルコミッション制の場合には顧客の取引頻度が多ければ多いほど報酬が高まるインセンティブが存在するため短期売買になりやすい傾向がありそうです。
またフルコミッション制のIFAの多くは個人のコネクション・能力に依存しているため、会社としてのサポート(組織力)が手薄(もしくはほとんどない)になる場合が多くなることでしょう。
現在米国ではIFAはチーム制を取り、各専門家による総合的な提案を行う体制に移行する事業者が増えています。

④個人投資家に出来ない分析能力(ツール)を持っている。
IFAのチーム制について更に詳しく述べると、多くの分析ツールを活用し個人投資家ではアプローチ出来ないレベルの管理体制を持つ事業者も存在します。そうした分析ツールの使用料は決して安いものではありません。しかしその使用料を「負担」と取るか、「顧客満足に不可欠な投資」と考えるかにも、事業者の考え方が反映されているのではないでしょうか。

⑤不動産や相続 法人なら税務対策・事業承継など運用以外の分野も高い水準で解決策を提案できる
IFAの中には証券運用に特化する事業者もあれば、株式や投資信託への投資は資産運用の一部という認識を持ち、不動産・相続・事業承継などの分野も総合的に提案をする事業者もあります。部分最適を求めるか、全体最適の提案を求めるかも事業者を選択するうえで重要なことになるでしょう。

このようにIFAといっても同じではなく、事業者ごとに特徴が存在するのです。こうした詳細な違いや事業者の考え方などは実際にIFAと話して確認してみないと判別は難しいことでしょう。
これからはIFAの中でも特色のある事業者が選ばれる時代になることでしょう。

***
IFAには総じて上記のようなメリット・デメリットがあることをご理解頂けたでしょうか。IFAのサービスを使うメリットだけで判断するのではなく、デメリットを十分理解した上で、サービスを利用するか決断することが重要だと言えるでしょう。

*本記事は正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、個人的な考えも掲載したものであるため、その完全性は普遍的ではありません。

参考サイト
http://time.com/money/3813571/financial-adviser-pros-cons/

https://money.usnews.com/money/blogs/on-retirement/articles/2016-07-20/the-pros-and-cons-of-hiring-a-financial-advisor

http://www.telegraph.co.uk/financial-services/investments/investment-pensions-service/benefits-of-financial-planning/

https://fstandard.co.jp/column_detail/162

https://ifaonline.jp/

http://www.jsda.or.jp/

 

<著者プロフィール>

福田 猛

ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役

大手証券会社入社後、10年間、1,000人以上の資産運用コンサルティングを経験。2012年IFA法人であるファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。独立系資産運用アドバイザーとして数多くのセミナーを主催し、幅広い年齢層の顧客から支持を受け活躍中。

著書に「金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託」(幻冬舎)がある。

2015年楽天証券IFAサミットにて独立系ファイナンシャルアドバイザーで総合1位を受賞。

 

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参考

経済金融情報メディア「F-Style」:https://fstandard.co.jp/column/

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