日税FPメルマガ通信 第281号

 

   

  

<逆張り投資で勝つ 不祥事後の企業株価・債券価格を検証する> 

平成29年12月25日発行

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 企業の不祥事は、残念ながら無くなりません。不祥事が起こると株価は大幅に下落します。それは逆張り狙いの投資家にとっては願ってもいない収益チャンスになり得ます。しかし大幅に下落した株式以外にも利益を上げる手段はありそうです。

■1.企業倫理関連の不祥事に、市場は冷静

 一言に不祥事といっても、内容は様々です。データ改ざん・個人情報漏えいなど企業体質や成長性の不信感につながるものから、談合・贈収賄といった倫理観に関わるものまであります。

 メディアは、スキャンダラスな内容を大きく報道しますので、世論としての会社信頼度は大幅に落ちます。しかし市場の観点では、倫理的不祥事は大きな問題にならないことが多く、一時的に値下がりしても2~3ヶ月で沈静化することが多いと言われるため、逆張りに好条件といえます。

■2.逆張り投資を株でなく債券で行うという投資戦略

   不祥事発覚後、株価は大きく下落し、それ以降は不祥事の内容次第で乱高下をします。短期の利幅を狙うデイトレーダーには願ってもない状況になります。しかしそれでは需給関係だけの“投機”になってしまい、思わぬ損失を被ることも多くなります。

不祥事企業に投資する際に別の投資戦略を検討することも出来ます。それは下落した株に投資するのではなく、債券に投資する方法です。

債券は企業が倒産しなければ決まったクーポンを得ることが出来ます。そして決まった償還時期に決まった額面(償還金額)が返ってきます。ですから不祥事発覚後、株価は低迷しているが債券価格は急回復する、という事も多いのです。

例を挙げてご説明します。
①フォルクスワーゲン

表1.png

こちらはフォルクスワーゲンの株価と金融関連会社の債券単価の推移です。2015年秋の排ガス不正問題で株価は大幅に下落しました。債券単価も同様に大きく下落しました。フォルクスワーゲンは米当局をはじめ総額150億ドルの和解金を支払うこととなり株価はさえない展開が続いています。

しかし債券単価は不正発覚前の水準まで戻しています。債券はフォルクスワーゲンが破綻しなければ元本は満期時に償還されます。市場では今後のフォルクスワーゲンの業績低迷の懸念から株価はさえない展開が続いていますが、投資家の多くはフォルクスワーゲンが破綻に至るとは考えていないため、債券価格は大幅に値を戻す展開となったのです。

②東京電力(9501)

表2.png

こちらは2010年から2016年10月までの東京電力の株価と東京電力の社債(クーポン1.845% 満期2017年9月25日)の債券単価の推移です。

震災直後には株価・債券価格ともに大幅に下落しています。その後株価は大幅に乱高下を繰り返していますが、震災前の水準を大きく割り込んだままです。

それに対して債券単価は2011年末を底にして上昇しました。結果的に東京電力には元本・利金の支払い能力があるという事で債券価格は100近辺まで戻ったと言えます。

しかし震災当時は政治判断ひとつで東京電力の処遇がどうなるか不明確な時期でした。株と同じく底値で債券を買うことは難しいことですが、仮に2011年末の債券価格が最安値の時にこの債券を購入していれば2017年9月25日まで保有した場合の最終利回りは複利で約10%でした。(5年9か月間は1.85%のクーポンを得られ、債券単価約70で購入したものが単価100で償還されるため)。債券でも価格次第では株式と同じように大きな利益を得ることも可能なのです。

このように株価が様々な理由で急落した後の投資戦略としては株に投資するだけではなく、他にも投資戦略があることが分かります。不祥事の原因・財務内容などを調べ債券に投資を行うことも一つの選択肢ではないでしょうか。

債券は株と同様に購入後値上がりしていれば(満期を待たずに)時価で売却して利益を確定することも可能ですし、保有期間に応じたクーポンも受け取ることが出来ます。(株式は権利付最終日に保有していないと配当を得られませんが、債券は保有期間に応じてクーポンを受取れます)

もちろん企業が倒産してしまうと債券も元本割れのリスクがあります。JALやエルピーダメモリのケースでは株主と同様に債券の保有者も損失を被りました。

また、債券は相対取引となり売買単価が取扱業者により異なります。(証券取引所で取引され、価格が誰でもわかる株式よりも不透明に感じる点もあるかもしれません)。他には債券は全ての企業で発行しているわけではないですので、不祥事で株価が暴落した企業の債券を購入しようとしても、購入できないこともあります。

しかし債券は株式には無い魅力を備えていることも事実です。投資における逆張り戦略には色々な投資方法がありますが、その一つとして“債券投資”を選択肢に入れることは有効な投資戦略といえるのではないでしょうか。

■3.債券投資の逆張り戦略以外にも、投資法をご紹介します

  大幅下落した株のなかで、RSI指数の高い銘柄だけを逆張る
RSI値は、直近数ヶ月の取引について上昇・下降傾向を数値化したものです。0~100%の間で推移し、50以上は上昇傾向。30%以下は売られすぎ、70%以上であれば買われすぎの状況と分かります。

何らかの不祥事で大幅下落した銘柄は、RSIが大きく分かれます。30以下であれば、市場がその企業に不信感を持っていることの現れです。反対に、70以上の高い水準を示していれば、“多くの投資家が逆張り銘柄として注目している”という情勢が見て取れます。

 不祥事の煽りをうけた他企業の株も狙い目
不祥事を起こした企業の関連企業や同業他社が煽りを受け、株価を下げることがあります。しかし、事態の詳細が明るみに出るにつれ、その多くは株価を回復させていきます。

2014年7月、ベネッセコーポレーションの個人情報漏えい問題が取り沙汰されました。このとき煽りを受けたのがジャストシステムです。名簿業者から漏えいした個人情報を購入し、営業に活用していた疑いが持たれたためです。980円から860円に下落、その後も下がり続けたものの、3ヶ月後には元水準に回復しました。

ジャストシステム(4686) 2014年の株価チャート

表3.png

逆張りする妙味がある銘柄かどうかは、不祥事の内容、責任の所在など、さまざまな角度から判断すべき問題です。煽りを受けた関連企業へ注目し、回復見込みがあるかを検討する方法もあります。いずれにせよ、状況の見極め・ポジション変更をいかに早く正確に行うかが、収益への分かれ目と言えます。

※※注意事項※※
当コラムの内容はお客様にとり参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。
記載したコメントの内容及び関連銘柄一覧は、必ずしも将来実績を示唆するものではありません。
将来の投資収益が保証されているわけではなく、投資元本を割り込むリスクがあります。 投資の最終的決定はご自身の判断でなさるようお願い致します。

 

 

 

<著者プロフィール>

福田 猛

ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役

大手証券会社入社後、10年間、1,000人以上の資産運用コンサルティングを経験。2012年IFA法人であるファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。独立系資産運用アドバイザーとして数多くのセミナーを主催し、幅広い年齢層の顧客から支持を受け活躍中。

著書に「金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託」(幻冬舎)がある。

2015年楽天証券IFAサミットにて独立系ファイナンシャルアドバイザーで総合1位を受賞。

 

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参考

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