日税FPメルマガ通信 第280号

   

  

<不動産投資における法人化のメリット・デメリット まとめ> 

平成29年12月15日発行

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 資産を賢く運用する為には、知っておくべき知識というものが多くあります。
例えば投資信託で上手に運用する為には、選択する投資信託の特徴や戦略等を考えて組み合わせる必要があります。また、不動産で運用する場合にも、知っておくべき不動産の本質や、知識というものが数多くあります。今回は、不動産投資における法人化のメリットやデメリットについてお伝えします。

■1.不動産投資における税制の落とし穴

 不動産投資において「税金」について最低限の知識がないままに投資を拡大すると、思いのほか税金の負担が増え、予想外の支出に驚くことになります。不動産投資において、もちろん「良い物件」を探し出し投資をすることは重要ですが、税金の事をしっかりと考えながら不動産の投資戦略を考えることも同じくらい重要と言えます。

 ここで重要なのは「個人」と「法人」との税制の違いについて認識をすることです。個人の最高税率は約56%で、法人税に比べて非常に割高になるという点です。本業で稼ぎ、さらに不動産投資で安定収益を得ても税金を多く収めることになります。
 日本では給与所得者の場合、源泉徴収によって税金の天引きが行われ、確定申告を自身ですることが少なく税金の負担についての認識が薄い為、この点をあまり深く考えずに投資をする人も多いのです。
 不動産投資を行うにあたり、税制の違いによるメリットを活かして、税引後のキャッシュフローを最大化することがポイントになります。

■2.不動産投資における法人化とは

   個人で不動産を保有している場合、不動産所得は総合課税の対象になります。先ほどお話しした通り、個人の所得は累進課税であり所得が高くなるに従って課税所得が高くなります。仮に、サラリーマンで給料を1000万、不動産収入が3000万ある人の税率は概ね40%を超えます。つまり、所得の半分近くを税金として納めなくてはなりません。
 個人で不動産収入が大きく増えてくるとそれだけ税金の負担が重たくなることがわかります。そこで、法人を活用することで不動産投資において様々なメリットを享受することが可能になります。

 例えば、収益不動産を保有している場合、不動産の管理会社を設立しその不動産を管理することで、管理費として所得を法人に移し、所得を分散し移転したり、法人で不動産保有したりすることで、支払う税率を引き下げることも可能です。収入が大きくなった場合、法人税の方が、個人の所得税よりも税率が低いからです。
具体的に、法人で収益不動産を保有した場合のメリットについてお伝えしたいと思います。

■3.法人化のメリットについて

  ①所得分散
 法人化することで、不動産保有者のみが取得していた収益を分散することで、実効税率を低くしたり、配偶者や家族に役員報酬や給与を支給することで、所得を分散したりする事が可能です。
 ここで重要なのは、そこでの支払いの給料の額は、仕事の実態に伴ったものである必要があります。あまり仕事の実態がないにも関わらず、過大な報酬や給料を支払う場合には、税務上否認される場合もありますので注意が必要です。

②給与所得控除
 個人で収益不動産を保有している場合、所得がそのまま課税所得になりますが、法人から役員、社員に給料を支払うかたちにすることで、「給与所得控除」を受けられるようになります。もちろん法人の経理上も給与が経費計上できます。このように、所得控除を使いながら再分配できるメリットがあります。

③経費を活用した資産形成
 個人事業の場合、自身や家族の退職金を経費にはできません。しかし法人については退職金の支給についても経費として認められています。また経営セーフティ共済などの制度も全額経費として認められるのも特徴です。毎月5千円から20万円までの積立が可能で、800万円を限度に全額損金として積み立てることが可能です。
 これを退職金として資金を支払う時に解約をすれば非課税で貯めた資金で退職金を支払うことが出来ます。また、修繕費等の積立について、個人で積立てる場合は、税金を支払ったあとの資金で積立をしなければなりませんが、経営セーフティ共済や保険を使うことで一部税金を支払う前の資金を積立てる事が可能です。

④損金繰り越しのメリット
 法人の場合、投資用不動産売却で譲渡損が出た場合、その他の収益と相殺することが可能であり、また損失の繰越期間も最大9年間可能であり、節税の対策として活用できます。
  
上記のように、法人で不動産を保有する事で、個人では経費にならないものを経費扱いにすることで節税になります。

■4.法人化のデメリット

  では法人化することでのデメリットはないのでしょうか。ここでは、法人化をすることのデメリットについてお伝えします。

①法人の設立費用が発生する。
 法人の設立の際に、登録免許税など最低でも20万弱の費用が発生します。

②維持、運営費用が発生する。
 法人を運営するにあたり、税理士に記帳や税務申告を依頼する場合などのランニングコストがかかります。

③赤字でも、住民税の均等割が年間7万円発生する。

④不動産取得に伴い登録免許税や不動産取得税が発生する。

 上記のように、法人を設立する事で、個人では発生しない費用等の負担があります。不動産投資の規模が小さく、家賃収入が少額の場合、法人化することでかえって費用がかさみ収益を圧迫する恐れもありますので注意が必要です。

■5.まとめ

   不動産投資において、法人化のメリット・デメリットについてお伝えをしました。このように不動産で投資をする際には、良い物件を選ぶこと以外にも、重要になるポイントがあり、これらを考えながら投資をすることで投資の効率が上がります。
 これは、不動産に限らず、有価証券での運用や、保険の組み方などにもつながることです。良い商品を商品選ぶだけではなく、それ以外に有効な知識を学ぶことで資産運用の効率を高めることが可能です。

 皆さんも、不動産や証券、保険等で資産運用を検討される際は、投資をする商品だけではなく、税金や組み合わせ等、それ以外の事にも目を向けて投資を検討することをお勧めします。まずは損をする理由をしっかり押さえることが重要になるのです。

 

 

 

<著者プロフィール>

福田 猛

ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役

大手証券会社入社後、10年間、1,000人以上の資産運用コンサルティングを経験。2012年IFA法人であるファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。独立系資産運用アドバイザーとして数多くのセミナーを主催し、幅広い年齢層の顧客から支持を受け活躍中。

著書に「金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託」(幻冬舎)がある。

2015年楽天証券IFAサミットにて独立系ファイナンシャルアドバイザーで総合1位を受賞。

 

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参考

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