リーマンショックの発端となったと言われる“パリバショック”が発生したのは2007年8月。
もうすぐ10年の歳月が経つのですが、危機は繰り返すものです。当シリーズでは過去の金融危機を検証します。
パリバショックは、2007年8月に世界の金融市場に大きなショックを与えた事柄です。フランスのパリに本拠地を置く、世界規模の金融グループBNPパリバ(通称:BNP Paribas)が引き起こしたサブプライム問題です。
アメリカのサブプライム住宅ローン危機による市場混乱を引き金にBNPパリバ傘下であったミューチュアル・ファンドが投資家からの解約を凍結すると発表したことにより、フランス国内だけでなくヨーロッパ全体、また世界のマーケットが一時的にパニックに陥りました。為替相場をはじめ株式その他の金融商品が大きく変動し、世界の市場に金融危機が広がるきっかけとなりました。
これら一連の騒動がパリバショックと呼ばれています。市場にどのような影響を及ぼしたのか詳しく見ていきましょう。
アメリカでは2002年ごろからサブプライムローンは問題視されていましたが、だんだんアメリカの経済が不況になり、住宅ローンを返済できない債務者の数が膨れ上がり、負債となって売りに出された住宅にも買い手がつかなくなってしまった経緯があります。
他の金融商品と組み合わされるなどして証券化され世界中の投資家に販売されていたサブプライムローン関連の証券化商品は信用を失い、リスクが著しく高まったなかで、パリバショックが起こります。当然、サブプライムローン関連の証券化商品には買い手がつかなくなり、またたく間に世界中の投資家からの解約が相次ぎましたが、解約に対応しようにも現金化が困難となりました。
さらに通貨や株価にも影響を及ぼし、為替相場は大幅に変動。ユーロと円は約15円、ドルと円は約10円、ポンドと円は約20円も10日間で下落してしまいました。アメリカ一国で起きた、サブプライム住宅ローンの支払いの延滞や債務不履行などの問題が証券化商品の信用を落とし、パリバショックを引き起こし世界中の金融市場に大きなダメージを与えてしまったのです。
パリバショックの直後は金融当局や市場関係者もサブプライムローン関連の証券化商品の問題がどれほど深刻なのか認識していなかったと言われております。専門家でさえ、パリバショックによる市場の混乱を傍観するしかなく、次に何が起こるのかはっきりしない状況だったのです。一連の混乱の後、いったんは鎮静化するも2008年3月の米大手証券のベアー・スターンズが経営危機に陥る事でさらに市場は二次的なショックに見舞われることとなります。
2008年9月にリーマンショックが起こります。これは言わずと知れた、米投資銀行のリーマン・ブラザーズの経営破綻による世界的な金融危機ですが、パリバショックとも大いに関係します。
BNPパリバはヨーロッパでも、仏銀行最大手と言われているほど大きく、BNPパリバ傘下のファンドによる投資家からの解約の凍結は世界中の投資家にダメージを与えるものとなりました。
ファンドは投資家からお金を集めて様々な投資先に投資することにより運用し、資金を大きくした後に投資家たちにリターンするという仕組みです。BNPパリバ傘下のファンドの規模は巨大で、そのファンドが解約の凍結をしたことにより、ファンドに投資していた投資家はもちろん世界中の投資家の注目を集め、金融不安が広がります。つまり、パリバショックによるサブプライムローン問題の表面化がリーマン・ブラザーズに飛び火し、やがて破綻することになったのです。
また、リーマン・ブラザーズは世界中に顧客を持つ大手投資銀行でしたので、投資家や金融機関が大打撃を受けます。その規模はアメリカ史上最大となり、負債総額は約6,130億ドル(約64兆円)と言われています。やがてBNPパリバ傘下のファンドも破綻し、投資家への払い戻しにも応じなかったことも問題視されることになります。
サブプライムローンはローンを組む際にも複雑なシステムでわかりづらいのも問題だったと言われています。最後までサブプライムのシステムを理解していなかった債務者が大勢いるほど、パリバショックから一連の破綻を招く根本的な原因はまさにサブプライムローンの仕組み自体にあったと言えるでしょう。
サブプライムローンは信用力の低い個人向け住宅ローンであり、金利や貸出条件なども個人によって大きく差が出て貸し付けの際の年利も幅広かったのが特徴です。信用力が低い債務者ほどローンの金利が高く設定され、返済が滞るとその分の遅延損害金を支払うことになります。
また、その他の債務者への貸付けでも金利は高めに設定されていましたが、特別に最初の数年間は金利が低く設定されておりました。所得が低い層でもはじめはローンの支払いができるものの多くの債務者の金利が高くなったころ、アメリカの不況が深刻化し、最終的には多くの債務者の支払いが滞ってしまったのです。
パリバのファンド凍結は、やはり米国を始めとしたサブプライムローンが原因でもあり、パリバのファンドも米国同様に収入が低い所得者に対して高額な物件のローンを組ませていた事もあります。
つまり米国の審査基準とパリバの審査基準が同じようなローンの貸付基準だったことも原因となります。米国の不景気なニュースをそのままヨーロッパ、世界でも同じように二次的に起こってしまった事と認識することが出来ます。
パリバショックの直後は金融当局や市場関係者もサブプライムローン関連の証券化商品の問題がどれほど深刻なのか認識していなかったと言われております。専門家でさえ、パリバショックによる市場の混乱を傍観するしかなく、次に何が起こるのかはっきりしない状況だったのです。一連の混乱の後、いったんは鎮静化するも2008年3月の米大手証券のベアー・スターンズが経営危機に陥る事でさらに市場は二次的なショックに見舞われることとなります。
100年に一度と言われる金融危機となったリーマンショック。その影響は徐々に薄れているようにも思えます。しかし資産運用の世界ではリーマンショック以降大きな課題を抱えたままになっています。
リーマンショック以前は資産運用の基本は国際分散投資でした。国内外の様々な資産(株・債券・不動産など)に分散投資をしていれば、どれかの資産が大きく下落しても別の資産が上昇しているため長期間でみれば影響は限られるという狙いです。
しかしリーマンショック以降は国内外の様々な資産が同じような値動きをする傾向が強まりました。そして日本人投資家から見れば相場下落時には円高になるため更に損するという環境が続くようになりました。次のチャートはパリバショックからリーマンショック時の各資産の値動きになります。
日本人は海外資産が投資対象の投資信託で運用する場合、資産の価格変動に加え為替の変動もリスクに上乗せされます。そのため、資産運用の難易度が更に増していると言えるのではないでしょうか。
<著者プロフィール>
福田 猛
ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役
大手証券会社入社後、10年間、1,000人以上の資産運用コンサルティングを経験。2012年IFA法人であるファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。独立系資産運用アドバイザーとして数多くのセミナーを主催し、幅広い年齢層の顧客から支持を受け活躍中。
著書に「金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託」(幻冬舎)がある。
2015年楽天証券IFAサミットにて独立系ファイナンシャルアドバイザーで総合1位を受賞。
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