日税FPメルマガ通信 第266号

  

<2017年・2018年のIMF世界経済の見通しと株価・為替への影響> 

平成29年5月15日発行

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世界通貨基金(IMF)が定期的に発表する世界経済の見通しは、市場が注目する経済指標のひとつです。今回は、1月16日に公表された最新の見通しから、「トランプ後」の世界経済について、IMFの見方を見ていきましょう。

■1.トランプ効果によるIMF世界経済の見通しの変化

 まず、IMFは今回の報告書で、2017年と18年の世界成長率見通しをそれぞれ3.4%、3.6%と、前回(2016年10月時点)の予想から共に据え置きました。1月20日にトランプ氏が米国大統領に就任予定(発表当時)だったタイミングでの公表だけに、トランプノミクスによる世界経済への影響がどれくらい見通しに反映されるか注目が集まりましたが、手堅くまとめたといえるでしょう。

 一方で、先進国を中心に見通しを上方修正した国もあります。米国もその一つで、2017年の経済成長率は、前回の2.2%から2.3%へと上方修正されています。IMFは予想見直しの理由について、2016年後半からの回復傾向に加え、トランプ政権の財政政策の影響を加味したと述べています。ただ、上昇幅は0.1%と小幅にとどまっており、今年中の影響は少ないと見ているようです。

 米国では、新しい大統領が就任すると、100日程度は「ハネムーン期」で、議会と良好な関係が続くといわれています。トランプ氏もその期間中はホワイトハウスや閣僚の人事をはじめ、議会、FRB(米連邦制度準備理事会)との関係調整に追われることになるはずです。

 新大統領の経済政策の方針がうかがえるとされる「予算教書」。上下両院からなる米国議会はこれを参考にして、予算案を作成します。米国の会計年度は10月に始まるので、大統領はそれまでに予算案にサインします。こうした手続き上、実際にトランプ氏の意向が反映された政策が実行されるのは、年の後半になるとみられます。

 実際、IMFの成長率予想も、2018年については2.5%と、前回から0.4%上方修正されており、トランプ政権による景気刺激策の効果で、18年は経済が上向くとみているようです。トランプ氏は選挙期間中、保護主義を打ち出し、米ドル安の誘導や米国製造業の復活などをうたっていましたが、現実的にそれらの政策がどこまで実現するのかは未知数です。そのため、IMFも修正幅を0.4%にとどめたとみられます。

■2.日本の株価・為替への影響

 

 日本の2017年見通しについては、円安効果を受けての企業業績の回復などが見込まれるため、その他の先進国と同様に、昨年10月の発表から0.2%上方修正して、経済成長率は0.8%としています。実際、大統領選の直後から、「トランプ相場」ともいうべき円安・株高傾向が続いているため、輸出企業に恩恵を与えることになりそうです。
 
 ただ、トランプ氏が就任直後に、公約として掲げていた環太平洋連携協定(TPP)離脱にサインしたことで、交渉が継続されたとしても当初の予定よりもずっと小規模なものにならざるを得ません。TPP交渉の行方が、輸出企業の株価に業績を与える可能性も考えられます。

 

■3.トランプリスクを懸念している人が注目している「インド株」

 

 経済成長率予想が上方修正された先進国と対照的に、新興国の多くは2017年の予想が引き下げられました。中でもTPPの加盟国で、もっとも恩恵が大きい国の一つだとみられていたベトナムやマレーシアをはじめとするASEAN主要5カ国は0.2%引き下げ、米国の移民政策の影響を受けるとみられるメキシコは、0.6%の引き下げでした。

 インドについては、同国政府が昨年11月に実施した高額紙幣の廃止問題をうけて、0.4%の引き下げになりました。これは、不正蓄財や汚職の温床になるとして、流通紙幣の合計価値の86%を占める現行の500ルピー(約800円に相当)紙幣と1,000ルピー紙幣を無効にするという大胆な政策です。

 識者などからはブラックマネーの撲滅と経済改革にプラスになるとして支持する声もある一方で、いまだ現金決済がメインの同国では、突然貨幣が使えなくなったことで市場は現金不足に陥っており、自動車など高額商品の売れ行きにも影響を与えています。当面は経済の混乱が続くことで、同政策が国内景気の足をひっぱる可能性は否定できません。

 それでも、IMFが2017年のインド経済に7.2%成長という主要国でもっとも高い成長率を示しているのは、それだけインド経済が力強いという見方の現れでしょう。インドはもともと人口が多く内需が強い上、TPPに加盟する意向も示していなかったため、トランプ政権が保護主義的な貿易政策を強めたとしても、影響は最小限にとどまると見られます。

 また、インドでは今年4月に「物品・サービス税(GST、いわゆる消費税)」が導入される予定です。消費税を導入すると、導入前の駆け込み需要の反動などで消費が落ち込むものですが、インドの場合はGST導入によって成長率が0.7~2%押し上げられるという試算もあります。

 これは、GSTの導入によって税制がシンプルになり、インド国内での州を超えた経済活動がしやすくなると考えられるためで、運輸や消費財、自動車などのセクターで株価に好影響を与えそうです。

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<著者プロフィール>

福田 猛

ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役

大手証券会社入社後、10年間、1,000人以上の資産運用コンサルティングを経験。2012年IFA法人であるファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。独立系資産運用アドバイザーとして数多くのセミナーを主催し、幅広い年齢層の顧客から支持を受け活躍中。

著書に「金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託」(幻冬舎)がある。

2015年楽天証券IFAサミットにて独立系ファイナンシャルアドバイザーで総合1位を受賞。

 

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参考

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