日税FPメルマガ通信 第262号

 

<退職金運用を失敗しないための3つのポイントとは?> 

平成29年3月15日発行

  

 ■1.老後資金は8000万円~1億円!

 「老後資金は8000万円~1億円」
実はこの金額、生命保険文化センター「平成25年度 生活保障に関する調査」をもとに算出されたものです。
この調査によれば、「老後の最低日常生活費」と「老後のゆとりのための上乗せ額」を合わせた「ゆとりある老後生活費」は、月額平均35万4000円です。

日本人の平均寿命は男性が80.5歳、女性は86.83歳(いずれも2014年)という時代。
退職後も20年~25年ほどの人生が待っています。そう考えると、20年で計算して月額35万4000円×12カ月×20年=8496万円、25年では1億620万円となります。つまり、ゆとりある老後生活を送ろうとするなら、老後資金として8000万円~1億円程度が必要と言えるのです。

 「果たしてこれほどためられるだろうか……」と思った皆さん。この金額全てを皆さん自身でためなければいけないわけではありません。実際にためる必要があるのは、ここから退職金や公的年金などを差し引いた金額です。退職金や公的年金は人それぞれ異なりますので、ここではまず、退職金の相場を知っておきましょう。

 厚生労働省「平成25年就労条件総合調査結果の概況」によれば、2012年1年間における勤続35年以上の定年退職者の退職金は、以下の通りとなっています。

大学卒(管理・事務・技術職) 2156万円(2008年調査時 2491万円)
高校卒(管理・事務・技術職) 1965万円(2008年調査時 2238万円)

 実のところ、退職金自体は2008年調査時よりも減少傾向にあります。一方、日本経済団体連合会が2015年4月に公表した「2014年9月 度退職金・年金に関する実態調査結果」では、学校卒業後に直ちに入社しその後標準的に昇進・昇格した管理・事務・技術職従事者(標準者)が、60歳で定年退職した場合の退職金は、大学卒で2357万7000円、高校卒で2154万9000円となっています。バブル期には大学卒の平均退職金は2637万9000円でしたから、明らかに減少傾向にあることはここからも分かります。

<60歳定年退職(標準者)の平均退職金額>
1992年 大学卒2637万9000円、高校卒2301万8000円
2006年 大学卒2489万7000円、高校卒2189万円
2014年 大学卒2357万7000円、高校卒2154万9000円

 この資金分は、ためるべき老後資金額から差し引いて考えればよいことになります。退職金の支給が見込める方は、あくまで平均額ではありますが参考にされるとよいでしょう。ただし、退職金が減少傾向にあることには注意が必要です。

 また、厚生労働省「平成25年就労条件総合調査結果の概況」によれば、退職給付制度がある企業は75.5%となっており、今や退職金制度がない会社も4社に1社は存在します。そのため、退職金が出ない会社にお勤めの方は、この金額分も自助努力でためる必要があります。

■2.公的年金額は働き方で大きく異なる

 もう一つ、老後資金として支給される公的年金についても確認していきましょう。働き方で異なるため、自営業者、サラリーマン、公務員の3つに分けて解説します。

自営業者
 まず自営業者の方の場合、公的年金として「老齢基礎年金」(国民年金)が支給されます。
2015年においては40年間国民年金保険料を納めた方で、78万100円が給付されています。仮に20年~25年の間、2015年価額で老齢基礎年金を受け取るとするならば、1560万~1950万円ほどになります。自営業では、通常退職金はないと言っていいでしょうから、ゆとりある老後を送るためには老齢基礎年金を差し引いた6936万~8670万円を自助努力で貯める必要があることが分かります。

サラリーマン
 次に、サラリーマンの方の場合を見ていきましょう。ただし、夫婦共働きか否かでも異なるため、あくまで参考程度として見ていただきたいと思います。
 厚生労働省のモデルでは、夫がサラリーマン、妻が専業主婦の場合、公的年金(厚生年金+国民年金)は月額22万円ほどとなっています。これが20年~25年支給されると、5280万円~6600万円となります。
もし、これだけの年金額が支給されるのであれば、ゆとりある老後資金は、年金とは別に3216万円~4020万円ほど用意が出来ていれば何とかなることになります。さらに、退職金がある方はここから差し引いた金額を準備できればよいことになります。

公務員
 公務員の方はどうでしょうか。公務員には、これまでの加入の方には職域加算制度があったため、サラリーマンよりも年金額が多くなることがありました。しかしながら、2015年10月以降は厚生年金に統一されたため、今後は厚生年金と同じ年金額ととらえたほうがよいかもしれません。保守的に考えるのであれば、サラリーマンと同様の3216万円~4020万円ほどの資金をどうするかを検討していくことになります。なお、都道府県職員の場合、退職金は全職種でおよそ1250万円、一般行政職で1730万円となっています。この金額を控除した額が、「ゆとりある老後資金」としてためるべき金額となります。つまり、一般行政職の方で1480万円~2290万円ほど準備する必要があるといえます。 

■3.退職金運用を失敗しないための3つのポイント

 こうして見てみると、自営業の方で約7000万円以上、サラリーマンの方で退職金がない方は3200万円以上、公務員の方の場合は職種にもよりますが約1500万円以上貯めないとゆとりある老後生活ができないことが分かります。

 それでは、この不足額をどうすればよいでしょう。

全て貯蓄で賄いきれる方は問題ありませんが、教育資金や住宅資金など他に必要な資金の準備も考慮すると、なかなか貯蓄だけでは賄えません。そこで、資産運用を考える必要が出てきます。

 とはいえ、実際に老後資金を貯蓄・運用できるのは、子どもが独立した50代前後からでしょう。そうなると、運用に使えるまとまった資金は、サラリーマンの方なら退職金となります。自営業の方は、積み立ててきた貯蓄か、毎月の収支からの余剰資金で早めの運用を行う必要があります。

 こうした点から、退職金運用のポイントとして言える1つ目は、老後資金としていくら必要なのか計算することです。2つ目は、どのぐらいの運用期間があるのか確認することです。まずはこの2つをしっかり考えましょう。
そして、どんな方法で運用するのか、どの金融機関を選ぶのか、どのようなタイミングで運用を行っていくのか。これらの運用面が3つ目のポイントといえます。最も重要なのは、こうした運用に関して、信頼できる相談相手を見つけて、ご自身に合った運用を行えること、相談できることです。

 

 

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<著者プロフィール>

福田 猛

ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役

大手証券会社入社後、10年間、1,000人以上の資産運用コンサルティングを経験。2012年IFA法人であるファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。独立系資産運用アドバイザーとして数多くのセミナーを主催し、幅広い年齢層の顧客から支持を受け活躍中。

著書に「金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託」(幻冬舎)がある。

2015年楽天証券IFAサミットにて独立系ファイナンシャルアドバイザーで総合1位を受賞。

 

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参考

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