日税FPメルマガ通信 第261号

  

<なぜあなたの割安株(低PER 低PBR)投資は損をするのか【後編】> 

平成29年2月25日発行

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 本記事の前編<なぜあなたの割安株(低PER 低PBR)投資は損をするのか【前編】>はコチラ

■4.トラップその2:民主党政権時代バリュートラップに陥った日本株

 先程は低ROE(経営効率が悪い)によって割安銘柄見えてしまうケースと、業種間でPER/PBR格差がみられるケースなどを確認しました。
次に市場そのものが投資家から見捨てられてしまうケースを確認してみましょう。

近年日本株を最も多く取引するメインプレイヤーは外国人投資家です。東証の売買の実に7割近くを外国人の投資家が占めています。メインプレイヤーである外国人投資家が日本株に魅力を感じなくなり、日本株投資から撤退してしまった場合に日経平均はどうなるでしょう?

その場合には、安い株はゴロゴロしているのだが、買ってもなかなか上がらないという事態になりがちです。これも「この市場は割安だ」と思って投資した投資家が陥ってしますバリュートラップです。

例えば民主党政権時代(2009年9月~2012年11月)は外国人投資家が見向きもしなくなり、日本株はバリュートラップに陥りました。
・(図⑤)添付資料 日経のPER

スライド5.jpg

このように、民主党政権下ではPERは低い状態が長く続きました。この頃は日本株には割安な銘柄が多い時期でした。しかし、日本よりPERが割高なはずのアメリカ株の方が、同期間により多くの収益を挙げられたのです。
・(図⑥)2009年9月を100とした日経とダウの相対チャート

スライド6.jpg

その後、自民党政権になってからは日本株のPERが上昇しました。政権交代当初は、株価の急激な上昇を受けて「まだ政権が交代したばかりで何も実行段階に移っていないのに、これ程まで株価が上昇するのは異常ではないか?」といった意見もよく耳にしました。

安倍政権発足当初の日経平均のPERは高いように見えますが、その後の円安などによる業績回復を織り込んだ段階では、PERは世界の株式市場と比較しても特に割高ではありませんでした。外国人投資家は政権交代による業績の拡大を見越して、高PERと思える日本株に投資をし、その後大きな利益を上げることに成功したのです。

民主党政権時に低PERの日本株に投資してもなかなか報われなかった投資家がいる一方で、高PERのダウ平均や政権交代後の日本株に投資して利益を上げる投資家もいるのです。
高PERの銘柄や市場を推奨しているわけではありません。しかしPERやPBRが低いからといって必ず勝つわけではないのです。

 

■5.ROEを上げるためには

 株価を高めるためにはROEを上昇させることが重要になります。ROEを上げる方法は基本的には「業績を上げる」か、「資本を減らす」ことです。なぜなら、

ROE=純利益÷株主資本 

だからです。株主資本は増資をした場合などは増えますが、毎年大きな変動のあるものではありません。ですからROEが増える要因は、(株主資本に変動がないのであれば)利益を上げるしかないのです。

近年よく行われるのは自社株買いによるROE対策です。使い道のない余剰資金で自社の株を消却していくと「ROE=純利益÷株主資本」の分母(株主資本)が減るため、結果ROEは上昇します。2015年度は日本の上場企業の自社株買の総額が5兆円を超え、8年ぶりに過去最高を更新しました。(自社株買いとは別に2015年度の配当総額は10兆円を超えています)。自己資本を増やす公募増資は2016年1月~6月は約18年ぶりの低水準となっています。企業の財務戦略は負債に分類される社債にシフトしているのです。

株主を重視する時代と言われていますが、各企業は「増益(企業価値向上)」に加えて「自社株買い」を積極的に行っているのです。株主重視の経営を行い、ROEを高めた結果、米国の株式はこれまで大きく上昇してきました。ですからROEを重視する経営は将来の株価予想において非常に重要と言えます。

しかし同時にPERやPBRといった指標は「絶対値」ではないのです。ある程度は(自社株買いの実施などによって)「いじれる」数値であるため、投資家はそれを盲信すべきではないでしょう。 

■6.トラップに陥らないために

 

PBRが低いのに株価が上昇しない理由はいくつもある、ということをご理解いただけたと思います。ではバリュートラップに陥らないためにはどうすればいいのでしょうか。

バリュートラップに陥らないためには株式の本源的価値を調べることが必要となります。そのために必要な手段としては・・

・有価証券報告書を複数年分通読する
・実地調査を行う
・企業へのヒアリングを行う
・同業他社比較/業種間比較を行う
・日々の流動性の確認を行う

といった地道な対処法があげられます。しかしこれらは個人投資家が行う事は難しいのではないでしょうか。
だから資産運用はプロが運用する投資信託に任せている、という投資家が多いのだと思います。しかし投信選びにも罠はあるので注意が必要です。割安株投資にも、投資信託選びにもトラップが存在するのです。 

 

<著者プロフィール>

福田 猛

ファイナンシャルスタンダード株式会社 代表取締役

大手証券会社入社後、10年間、1,000人以上の資産運用コンサルティングを経験。2012年IFA法人であるファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。独立系資産運用アドバイザーとして数多くのセミナーを主催し、幅広い年齢層の顧客から支持を受け活躍中。

著書に「金融機関が教えてくれない 本当に買うべき投資信託」(幻冬舎)がある。

2015年楽天証券IFAサミットにて独立系ファイナンシャルアドバイザーで総合1位を受賞。

 

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参考

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